宍粟は「日本酒発祥の地」 発酵のふるさとプロジェクト展開
播磨国風土記に記述 酒蔵通りで風情味わう
宍粟市は豊かな自然から多くの食の恵みを享受しているが、その中心に座るのが「日本酒」だ。現存する風土記のなかで日本酒についての最古の記述が残るのが今の宍粟。「日本酒発祥の地」として今も酒造りの文化が根付き、その歴史を伝えている。
日本酒についての最古の記述が残る「播磨国風土記」に、伊和大神が携えていた乾飯にカビが生え、そこから酒を醸造、酒宴を催したという伝承が残るのが「発祥の地」のいわれ。一宮エリアの庭田神社は霊跡を称えて奉っており、この酒宴を開いた場所、近くの「ぬくゐの泉」と呼ばれる川が日本で初めて酒を造った場所とされる。
宍粟市では日本酒発祥をはじめ「発酵のふるさと」として発信するプロジェクトを展開している。日本酒をはじめとする醸造業、藍染めなど各分野で発酵の魅力をアピールしており、庭田神社で採取された麹菌「庭こうじ」を使った甘酒「にわの糀(はな)」も販売されるなど、この伝統を受け継ぐ取り組みが進む。
「日本酒発祥の地」の文化を強く感じられるのが、山崎中心地を通る「酒蔵通り」。今は2軒の酒蔵が醸造を続けているが、かつての蔵や商家も残り、歴史風情漂うエリアとなっており、散策に繰り出す観光客も多い。
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山陽盃酒造は1837年の創業。明延鉱山の一角を「明壽蔵」と名付けている。鉱山を天然の貯蔵庫として日本酒の貯蔵・熟成に使用しているのは珍しいと言われている。
代表銘柄である「播州一献」の一献とは「まぁいっぱいどうぞ」という意味だそうだ。
専務の壺阪雄一さんは「播州地域の豊かな自然の恩恵を受けて作られたお米や水を使って、地酒本来のよさを大切にしながら、手間と暇をかけて醸したお酒をどうぞ、という意味が込められているんです」と話す。
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老松酒造は1768年創業。水や気候など酒造りに適した宍粟の環境のもとで、昔ながらの製法で「寿惠広老松」「沙月」といった名酒を生産し続けている。
同社の酒の特徴について、女将の前野久美子さんは「うまみがあって酸味がある飲み口ですかね。冷酒もいいですが、宍粟は寒いので個人的には燗酒が好きですね。いろいろな形でお酒を楽しんでほしいです」。
また、力を入れるのが発酵文化の発信。建物を改装し発酵食品のランチを提供する「老松ダイニング」を営業している。酵素玄米や玄米ヨーグルト、日本酒を作る麹で作った料理が並ぶコースを目当てに休日には多くのファンが訪れる。
前野さんは「酒蔵通りを賑やかにしたいと思い始めましたが、やはり健康なくして幸せはないという考えからです。発酵が美と健康にいいということ、日本酒の美味しさを伝えていきたいですね」と話している。
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この酒蔵2社は2018年、宍粟の幻の地酒「三笑」を復活させた。江戸創業、1977年に営業を終了した本家門前屋の銘柄を観光客誘致にもつなげようと両社がそれぞれ醸造。それぞれの「三笑」の味を楽しむのも宍粟酒文化の旅におすすめだ。
兵庫県宍粟市 観光に関するお問い合わせ
公益財団法人しそう森林王国観光協会
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