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熊本苓北で出会った歴史・文化・食

地域に息づく歴史への誇りを感じに

かつて天草全土が「苓州」と呼ばれていた時代、数百年にわたって政治・経済・文化の中心地は、苓北町(れいほくまち)だった―。田嶋章二町長のインタビューでその事実を知った私たちは驚くとともに、今取材のテーマを「天草の古都」にしようと決めました。

田嶋町長のお話は新鮮な話ばかりで、苓北町が長い間中心地として栄えてきた理由がわかりました。その一つ、苓北町は熊本県ですが長崎県近くに位置することから、天草で最初のキリスト教伝来地であり、南蛮文化の影響を強く受けているということです。

町の日常の「食」についても、南蛮文化の名残りが多く見られます。老舗の菓子店「黒瀬製菓舗」で長く製造されているカステラ。ポルトガル人によって持ち込まれ日本で初めて天草に伝わったとされるイチジク「蓬莱柿」を使った「洋菓子店Hana」の「天使のデザートテリーヌ」も苓北町の歴史を後世に伝えようとする取り組みだと感じました。

天草は焼物の産地としても知られ、天草陶石は不純物の少ない、世界でも最上級の陶石で、全国の陶石生産量の8割を占めていると言われています。その陶石を使って陶磁器を製造している「内田皿山焼窯元」は、陶器の「たこ壺」生産量日本一を誇ります。プラスチック製と違い、自然に帰る陶器のタコつぼはSDGsの理念にも合致し、これからの時代さらにニーズが増えていくものと思いました。店内には、見事な光沢の白磁の器などバラエティーに富んだ陶磁器が並んでおり、お気に入りの器が見つかること間違いなしです。

島原・天草一揆の舞台となった富岡城から見る景色は、町全体を見渡せる絶景ポイントです。天草四郎率いる一万を超える一揆勢でも攻め落とせなかった「難攻不落の富岡城」。その誇り高い歴史は今も町の人々の心に息づいているようです。

今回の取材で出会ったボランティアガイドの方や町役場の方々など、苓北町の歴史を多くの人に知ってほしいとする強い気持ちを感じました。

苓北町は歴史も深く、特産品も豊かな町です。旅行の醍醐味の一つとして、その土地に行かなければ出会えないものがあります。県下一の生産量を誇るレタスや新鮮な緋扇貝、天領岩ガキなど、苓北町の特産物を堪能することもできます。

かつてこの町を訪れた儒学者・頼山陽(らいさんよう)は天草灘の夕景に感動して「雲か山か呉か越か…」と漢詩を詠いました。儒学者を感動させた夕陽の絶景も見に苓北町へお越しください。

(九州観光旅館連絡会福岡事務所・星原真梨)

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