清水寺を深く楽しむ時間(2) 伝統の味を守る矜持―清水羊羹
現地で味わうからこそ 西村堂・西村純一さん
清水に羊羹が伝わったのは平安時代、慈覚大師が唐からの帰途に立ち寄ったのが始まり。精進料理の一つとして羊の肝の熱い吸い物を真似た製法を地元の人たちに伝えたのが始まりだという。改良を重ね、今の清水羊羹が形づくられていった。
清水寺から少し山を下った清水地区には最盛期10軒の羊羹製造元があった。今は4軒になったが、その一つ、古来の清水羊羹を伝承する老舗が「西村堂」。6代目の西村純一さんに話を聞く。
「創業は明治4年、農閑期に作り始めたそうです」。当時から現代に至るまで小豆、寒天、砂糖のみを使用し添加物は一切使っていない。「自家製餡を時間をかけて丁寧に練っているので、寒天で固めた感じのしない食感が特徴です」。
小豆を練る作業で鍋に残る「こさげ」をいただいた。小豆の風味が口の中に広がり、甘すぎずコリっとした食感がいい。竹皮包装された羊羹も見せていただいた。「一つひとつ手作業で包むので、結構たいへんですけどね」。伝統を守る西村さんの矜持を垣間みた。
「うちの羊羹は真空パックでないので、県外にはなかなか出せない。実際は賞味期限150日間なのですが」。昔ながらの清水羊羹は現地で味わうからこそ価値がある。
製造元4軒の出店で会話楽しむ
清水寺の境内では、4軒の清水羊羹の製造元が店を出す。「黒田千年堂」「遠藤瑞泉堂」「深田豊隆堂」「西村堂」。
いずれの出店も、それぞれ自慢の羊羹を試食させてくれて抹茶やお茶をサービスしてくれる。何より店のおばさんと話すのが楽しい。
黒田千年堂で、目の前で点ててくれたお抹茶をすすり、羊羹をいただきながらお喋り。「私はまだ経験が浅いけど、100年以上やっています。お馴染みさんが来るとうれしい」。深田豊隆堂では「昔は臨時バスが出るぐらい賑やかだったがね。最近は外国の人も来るね」。遠藤瑞泉堂は残念ながら、この日はお休み。西村堂では「みんな違って、みんないい4軒だよ。人生は縦糸だけじゃない。横糸が世間。欲がないけん、よく見えますわ」と哲学的な深~い会話も。
清水寺で4軒の出店をめぐるのも安来の旅の醍醐味でもある。
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