アートに浸り物語を紡ぐ時間(2) 絵画、食で心温まる―加納美術館・やまさや
安来市南部、中国山地の懐に抱かれた山合いに並ぶように建つ「安来市加納美術館」とレストラン「やまさや(加納山佐屋)」。
ストーリー感じて 安来市加納美術館・神英雄さん
加納美術館は、生涯にわたって平和を願い続けた画家、加納莞蕾(かんらい、本名辰夫)の思いを伝える作品や資料を中心に、人間国宝の作品を含む備前焼や各地の名碗を所蔵する。神英雄館長に館内を案内してもらった。
「美術館とギャラリーの違いはストーリーがあるか、ないかだと思います。現在の展示は派手さはないと思われるかもしれませんが、ただ作品を並べているのではありません。作家の思いや人生観を感じていただけるような展示をするようにと心掛けています。当館でなければ味わえないストーリー、それが加納美術館なのです」
気づくと、戦後、中央画壇との関係を断って、フィリピンの刑務所で服役していた日本人戦犯の赦免に尽力し恒久平和を希求し続けた加納莞蕾の世界に入り込んでいる。「『赦し難きを赦す』という莞蕾の願いを伝えるべく、年間6回の企画展では平和や人間愛を訴える作家や地元安来の作家の展示を中心に行っています。展示を通して安来の宝を知ってもらえたらうれしいです」。時折ユーモアを交えた説明と展示作品を貫くストーリーに美術館を出てからもしばらく、温かい余韻に浸っていた。
美術館では、観光協会と協力して、近くの原生林の中にある樹齢400年以上といわれる白椿や桂、楓の巨樹を見に行くミニツアーも実施しているという。
開館は9−16時30分、火曜休み。入館料は大人1千円(団体割引あり)、学生(高校生以上)500円。
地域に溶け込み地の旨み伝える レストランやまさや・石原勝さん
レストランやまさやの店長、石原勝さんは東京のホテルで料理の腕をふるっていた。3年前、故郷の奥出雲町に近い、この地に移住を決意。奥さんと娘さんも賛成し、都会にはない暮らしと、土地のものを生かした料理を提供している。
「これ、できたから使ってよ、と皆さんが持って来てくださるんです」と、野菜をふんだんに使ったランチは、どれもやさしい味。色どりも豊かで食欲をそそる。夜はフレンチのコース料理をはじめ、寿司や居酒屋風のメニューまでお客さんのリクエストに応える。
「東京時代に、あらゆるジャンルの料理を経験させてもらったお陰です」と石原さん。加納美術館とコラボした料理もこれまでやってきた。「昨年は童画家の佐々木恵未さんの企画展で『大人のお子様ランチ』を出しましたし、写真家の高嶋敏展さんからご紹介いただきライブとディナーも行いました」。目下の課題は集客の波動が大きいこと。一度食べてもらえれば、と門外漢ながらも思わずにいられなかった。
昼は最大32席、夜は20席。おすすめの「本日のランチ」は1200円。安来から奥出雲の周遊時にぜひ!
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