先人の遺産をQOLで資産化 観光都市小樽のまちづくり
この先100年に向けて
小樽市が今登録を目指している日本遺産は、今も観る者に対してまばゆく光を放っている歴史資源が主だ。北のウォール街と称される旧銀行の建造物が残る一画や、小樽ガラス販売店や美術館、飲食店などに趣を変えて存続する北前船の船主らが築造した石造りの倉庫群などが構成文化財になる。
そして小樽を代表する観光スポットの小樽運河もまた、1960年代に起こった市民の保存運動の賜物でもある。まさに民の力で小樽観光の礎は築かれた証が、日本遺産になるわけだ。
ただ、市民の間では今、遺産を遺産のままにとどめるのではなく改めて資産として後世に伝えていこうという気運が盛り上がり始めている。その観点は、自らの暮らしに根づいたQOL(クオリティ・オブ・ライフ)という生活の質の向上に基づいた活動だ。
行政も小樽港第3号ふ頭を13―14万トン級の大型クルーズ客船が着岸できるよう整備し、みなとオアシスとして交流機能を高めようとしている。多くの市民が口を揃えて自慢する「札幌にはない海が見えるまち」の高付加価値化につなげる取り組みだ。小樽発展の緒が北前船だったことを思うと、100年以上が経って再び原点に戻るとも言っていい。
小樽ガラスでもスタジオガラスという吹きガラス体験の先駆者である淺原千代治さんが特産のホタテの貝殻を再利用しガラス製品化を試みることも始まっている。そのホタテを「おタテ」としてブランディングに力を注いでいるのも民の皆さんだ。
近未来では、2030年に北海道新幹線が札幌まで延伸し新小樽駅(仮称)が開業する。通過点にならず、観光客も人生の質を高めるQOL実現が来訪動機になるまちとなるよう、この先100年に向けて民の力で先人の遺産を資産化し続けようとしている。本特集でその一端を伝えたい。
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