小樽観光が射程する近未来 官・民をけん引―小樽2トップに聞く(2) 「港を巷」で賑わい―西條・小樽観光協会長
付加価値もつ交流空間に
―市長はいかがでしょうか。
迫 明治期以降の歴史的な街並み、近代的な建造物が数多く現存していることが小樽の強みの一つですが、これらの文化財を将来にわたってすべて保存、継承していくことは物理的、財政的にも難しいと考えていますので、歴史まちづくり法の「歴史的風致維持向上計画」を策定し、重点的な保全地域の設定による計画的な歴史的街並みの保全活用を図っていくこととしています。
また、小樽港を生かした取り組み、海の観光をさらに推進するためにも、現在進めている第3号ふ頭基部周辺の再開発により交流空間としての整備を進め、市内観光エリアと隣接する強みを前面に観光客やクルーズ客船のさらなる誘致を進めていきます。それは、北海道新幹線の札幌延伸に伴う新駅の活用についてもつながります。クルーズ客船やフェリーと組み合わせた旅行商品の造成など、本市の強みを生かしたいと考えています。
一方で、観光まちづくりを担う、担い手としての民間の力についても目を向けていく必要があります。現在、認定を目指している日本遺産「北海道の心臓」のストーリーにもありますが、小樽が観光都市となった契機は「小樽運河保存運動」=「民の力」によるものです。市が譲渡を受けた旧北海製罐小樽工場第3倉庫の活用について民間の協力も必要となってまいりますので、小樽観光を持続可能なものにするためには行政だけではなく、企業や市民の参加など、民間の力が必要不可欠と考えています。
―小樽市101年、110年を見据えて、まちづくりや観光振興をどう進めていきますか。
西條 小樽の魅力は何といっても海です。これを生かした観光振興が大事だと思います。いま小樽駅からまっすぐ海に向かっていくと第3号埠頭があり、大型クルーズ船の岸壁整備が行われており、その基部の開発も計画中です。我々は今まで港湾は人が立ち入れない場所という認識でしたが、これからは「港を巷に」をテーマに賑わいのあるエリアにして、周辺の北海製缶の3号倉庫や北運河とあわせて小樽の新しい顔にしたいと考えています。あとは歴史的な建物、通りを整備し、それを活用して街全体が博物館として歩ける空間を作れたらいいと思います。小樽らしさをどのように演出するかですね。
人口減も気になります。ある程度の規模感がないと、まちづくりも進みません。小樽の観光振興を通して少しでも寄与できたらいいなと思います。
迫 これから小樽が選ばれる観光都市となっていくためには歴史や港など、まちの個性や強みを生かしたまちづくりが必要不可欠です。
そのためには、単なる観光地ではなく、歴史や文化を感じるまち、交流空間としての付加価値をもった港町として人や企業に共感していただけるような施策を進めることにより、市外からの企業の資本参入や、起業人材の移住などに結びつけたいと考えております。
コロナ禍前で年間約700万人の入込がありましたが、より滞在型の、より消費型の観光、つまり量より質を重視した観光戦略が必要で、そのことが小樽観光を持続可能なものとすると考えています。
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