地球の息吹を感じる室戸ジオの旅(2) 室戸のシンボル「海成段丘」
豊潤な畑が広がる西山台地
室戸岬から西側、海岸から急こう配でせり上がり、その上は平らに広がっている特徴的な地形が連なっている。これが室戸ユネスコ世界ジオパークのシンボルの一つ「海成段丘」だ。
その字のまま海から成った階段状の丘で、丘の上はもともと海底にあった。そのメカニズムは図で示している通りだが、室戸の場合は大地が隆起する速度が1万年あたり平均220メートルになり、これは世界トップクラスのスピードであるらしい。その隆起する力と、地球全体の寒暖による海水面の変化により海成段丘はつくられた。室戸の海成段丘はおよそ13万年前に形成されたと考えられている。
室戸市内では、そこかしこに海成段丘が形成されているが、崎山台地と西山台地が代表的。西山台地で生まれ育った河野智津さんに海成段丘を案内してもらった。
吉良川のまちから急坂を車で登ると、いきなり視界が開ける。丘の上、平らな部分に出たからだ。そこは広い畑とともに、のどかな風景が広がっている。河野さんによると、西山台地の開墾が始まったのは江戸初期。隣の芸西村の人たちが土佐藩の家老の勧めもあって入ってきたそうだ。
「ここらの地面を掘ると、今も『くさり礫』といって、波打ち際にころがっているような丸い石が出てきます。ここが昔は海だった証拠です」と河野さん。
さらに集落の中を案内してもらう。「海からの風が強いから家や畑の周りに木を植えているでしょ。防風林。風は強いし、私が子どもだった昭和31年(1959年)に道路ができるまで、下のまちへは歩いて行っていました」。ずいぶん苦労の多い土地なのに、なぜ江戸時代からずっと住み続けてきたのだろう。
「ここの畑が豊かだから。水はけもいいし、日当たりもいい。野菜をつくるには最高の土地だからね」と笑う。野菜は適度に潮風を浴びて、それがストレスになって旨味を蓄えようとがんばる。だから海成段丘で採れたサツマイモもスイカもナスも県外にファンがいるほどの絶品らしい。
河野さんの実家の畑は、段丘の際、急傾斜で海へと続く真っ先にまで続いていた。そこから見る太平洋の雄大さ、美しさと言った…。「こんなにきれいに見られることは滅多にないよ」。海成段丘は人間にもエネルギーを与えてくれた。
西山台地では、秋の収穫時に芋掘り体験を楽しむツアーなども実施している。
ちなみに西山台地など海成段丘の全体像を見るには、崎山台地に建つ国立室戸青少年自然の家にある展望台からが絶景。
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