地球の息吹を感じる室戸ジオの旅(1) 室戸岬―太古の地層と多様な植物
室戸ユネスコ世界ジオパークの旅は、地元の人と一緒にまわるのが楽しい。ジオパークについてはもちろん、歴史や自然、室戸の生活文化に精通している室戸市観光ガイドの会の皆さんが精力的に活動している。ガイドは女性が多く、土佐弁を交えた温かな案内にファンも少なくない。年間7千人を超える観光客にジオパークの魅力を伝えている。室戸は市内各所でガイドが活躍し、室戸ジオパーク推進協議会が定期的にツアーも実施している。まずは室戸世界ジオパークセンターに問い合わせてみるのがいい。
大地と海が織りなす物語 地元ガイドとツアーで探訪
室戸ユネスコ世界ジオパークの中核、室戸岬。紺碧の海から次から次へ波が押し寄せ荒々しい海岸にしぶきを立てる。常緑の木々が生い茂ったその先に、白亜の灯台が青空をバックに映えている。その風景には、大地と海が織りなす滔々とした物語が流れている。
室戸市観光ガイドの会に案内を依頼して岬一帯を歩く。室戸岬の記念撮影スポットにもなっている幕末のヒーロー中岡慎太郎像の脇の山道を登るところから、ガイドツアーは始まる。標高約30メートルの高さの展望台から、これから歩く室戸岬の先端を望む。太平洋に鋭利な三角形で飛び出している岬は、東側は波が荒く、西側はベタ凪の対照的な表情を見せる。
海岸に出ると、荒々しく切り立っている上、ぐねぐねと湾曲しているしま模様の岩が乱立。1600万年以上前に深海に降り積もった砂や泥の地層がそのまま地表に隆起したもので「タービダイト層」という。岩を良く見ると、何かがはった跡が岩に刻まれている。海洋生物が深海の底を這いまわった痕跡。「生痕化石」というそうだ。
海岸で目につくのは多種多様な植物。可憐な花をつけているものも。奄美大島の大島紬の染料になる車輪梅、ノアサガオ、センニンソウ…ウチワサボテンなど。黒潮で運ばれた種が自生したものが多いという。室戸岬で修行していた空海に、いじわるなおばあさんが「それは食べられない」と断ったというクワズイモなんて植物も。草花が好きな人は「植物園のよう」と喜ばれるらしい。
その中でも圧巻なのはアコウの木。岩の上にタコの足ように根がからまっているように伸びている。よく見ると、枝から直接根が出ている。見た目は少しグロテスクだが生命力を感じさせパワーをもらえそうな木だ。
岬から東海岸を少し歩く。国道を隔てて2つの洞窟「御厨人窟(みくろど)」と「神明窟」が並んでいる。空海が修行した洞窟で、お経を百万回唱え開眼するに至った奇跡的な体験をした場所と伝えられている。この窟から眼前に広がる空と海を見て「空海」という名をつけたという逸話も残る。近くには、空海が使った行水の池もある。
四国遍路で室戸岬では必ず立ち寄るスポットらしい。市内には24番札所の最御崎寺、25番札所の津照寺、26番札所の金剛頂寺と3つの霊場が。空海が室戸を大切に思っていた証かもしれない。
海と大地がせめぎ合う岬は、人が深く関わる場所であることを知るガイドツアーだった。1時間2人まで2千円、10人までは1人1千円。
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