古から続く出雲「たたら」風土記 鉄めぐる文化と暮らし/日本遺産
近年復活の製鉄法 往時の息遣い感じて歩く
島根県安来市、奥出雲町、雲南市では、文化庁の日本遺産に「出雲國たたら風土記 鉄づくりが生んだ物語」が認定されている。1400年以上前から日本独特の製鉄技術「たたら」を継承してきた歴史は、地域独自の文化として現代に受け継がれている。関連施設をめぐれば、今も暮らしに根付くその風土に触れられるだろう。
「たたら製鉄」は中国山地で産出される砂鉄と木炭を燃やすことで高純度の鉄を生産する技法。江戸時代に最盛期を迎え、一時は衰退したが、近年復活し、その伝統は今も残る。昨年にはEXILEメンバー出演の映画「たたら侍」が全国公開されたのも記憶に新しい。安来・奥出雲地域一帯にはその文化を伝えるゆかりの史跡が点在。たたらにまつわるストーリーを追うことができる。
たたら製鉄の鉱山町の景観が残る雲南市の「菅谷たたら山内」は、訪ねるだけで往時の空気感に身を委ねることができる。砂鉄採掘と関係が深い奥出雲町の棚田の風景もたたら製鉄の文化を伝える貴重な光景だ。
安来市の金屋子神社には鉄づくりの神話が残り、隣接する「金屋子神話民俗館」は、金屋子神やたたらにまつわる民話を紹介。この地に息づいてきたたたらのストーリーを俯瞰的に知ることができる。
たたら製鉄の積出港として栄えた安来港に近く、今も「ヤスキハガネ」を生産する日立金属安来製作所の近くには鉄の総合博物館「和鋼博物館」が。たたら製鉄の歴史を貴重な資料の展示で伝えるほか、ヤスキハガネ製の包丁やナイフも販売している。
最前線の現場を訪ねたければ、安来市の「鍛冶工房弘光」へ。たたらの時代から数えて11代続く鍛冶屋で、タイミングが合えば工房を見学させてくれる。昔ながらの丁寧な手仕事は必見だ。
そのほか、民謡安来節など郷土文化も鉄の交易により増えた人の往来からもたらされたもの。出雲そばや仁多米といった食も含め、自然と共生するたたら製鉄の文化は深くこの地に根を張り、伝承されていく。
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