古き良き暮らしが連綿と息づく 徳島・にし阿波(1) SDGsな心の交流
数十年前、日本の田舎の古民家を宿に再生して観光の起点とした元祖とも言える徳島県・祖谷の秘境。コロナ明け、祖谷を含めたにし阿波地区に2019年並みのインバウンドが押し寄せている。農家民宿も好評な理由を探りに訪問した。(旅行ジャーナリスト・村上英子)
山の暮らし、千年の農業文化
元祖・古民家再生プロデューサーのアレックス・カー氏。60年前に来日し、祖谷渓に魅せられ、茅葺屋根の古民家をモダンな宿にしたはしりだ。徳島県北西部、吉野川中流域地域の祖谷は、平家の落人伝説やかずら橋で知られ、秘境イメージが観光振興と結びついてきた。コンビニもない、信号もない、古き良き暮らしが今なお連綿と息づく地域だ。
250年前に建てられた祖谷地方で最も大きな武家屋敷で囲炉裏を囲んで郷土料理のランチ。でこまわし(豆腐やコンニャクを串に刺した田楽)やアマゴ、そば米雑炊。食後に、標高差が390メートルもある落合集落の南敏治さん(80)宅でやぶきた茶をいただく。標高755メートル、スカイツリー(634メートル)より高い。
「5代目です。コロナの3年間で人とのつながりが希薄になった中高生が農業体験で喜んでくれるのが嬉しいです」
一般社団法人そらの郷は官民連携で世界に通用する観光地域づくりを目指し農宿も好調だ。教育旅行の民泊を25年に渡り受け入れてきた歴史を持つこのエリアには179軒の民泊受入施設があり同時に受入可能な人数は最大600人。山腹の急傾斜地に張り付くように形成される集落で、古くから培われてきた植物資源を循環させる農業、自然と共生する暮らしは2018年に「世界農業遺産」に認定された。
山の暮らし、千年の農業文化、サステナブルな自給自足的農泊体験は、心の交流として刻まれるに違いない。
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