「アジフライの聖地」を世界へ発信 友田吉泰・松浦市長に聞く(1) 来訪価値のイメージ醸成
2019年に「松浦アジフライ憲章」を掲げ、松浦市が「アジフライの聖地」であることを宣言。それ以降、アジフライを核に観光振興を進めてきた。そして22年の西九州新幹線開業をきっかけに、松浦市の魅力をより発信、24年は蒙古襲来から750年の節目を迎える。松浦市の友田吉泰市長に松浦観光について聞いた。
「食の松浦」売り出す ここだけのアジフライで勝負
―西九州新幹線が開業し、松浦市も注目を集めているのでは。
新幹線の効果は正直なかなか実感できていません。ただ大きなチャンスだと思っているのは、武雄温泉駅―新鳥栖駅間が開通していないことです。西九州新幹線を使うには必然的に武雄温泉駅で降り、対面ではあるものの新幹線と在来線の特急を乗り換えなくてはいけない。そこがチャンスと捉えています。
私たちがまちの魅力をしっかりと発信していけば、武雄温泉駅で乗り換える乗客が在来線で有田まで来て、有田から松浦鉄道を使って経由し、松浦へ来ていただける可能性があります。西九州新幹線の全線開通までにはしばらく時間がありますから、その間に松浦の魅力を知ってもらえれば、全線開通しても「松浦に行かないとね」と思っていただけるようなイメージづくりが今から必要だと考えています。
また、西九州自動車道を使うと福岡市内から松浦まで1時間半ほどで来ることができます。福岡近郊と佐世保近郊の一部が有料なだけで、ほとんどが無料の風光明媚な道路です。全線開通すれば通過点になるという声もありますが、ポテンシャルさえ高ければ来ていただけますので、松浦の情報を発信し続ければ大丈夫だと思っています。
―松浦市は食をもっとも得意としていますね。
「アジフライの聖地」として売り出していますが、そもそも日本人でアジフライを知らない人はいません。しかしながら惣菜として買って食べているアジフライは薄くて独特な臭みがあり、これが普通のアジフライのイメージになっています。
我々がこだわって提供しているアジフライは、水揚げされたものをすぐアジフライにするノンフローズンか、水揚げされて新鮮なうちにさばき、パン粉で衣をつけた状態で冷凍させるワンフローズンです。このどちらかが松浦のアジフライで、まったく臭みがなく肉厚なんです。
ある友人から、松浦市内の店で出すアジフライは「すごく美味しいから、もっとPRすればいいのに、もったいない」と言われたことがあります。その店に行って食べたら確かに美味しいのですが、その美味しさは当たり前すぎて心に響きませんでした。
そのあと他地域へ行く機会があり、アジフライを頼んで食べたら薄くて臭くて驚きました。そこで日々いかに美味しいアジフライを食べているかに気づき、松浦のアジフライは絶対勝負できると思ったんです。その確信を持って、市長選挙で松浦を「アジフライの聖地」にすると訴え現在に至っています。
―なぜ、松浦以外のアジフライは薄くて独特の匂いがあるのですか。
臭くなるのは、魚体を凍らせ加工賃の安い外国などへ送って、そこで解凍するからです。解凍するとドリップが出ます。ドリップは魚体全体に臭みを広げます。それを加工してアジフライにするから、身は薄くなり臭みも全開になります。
伊万里湾は、元寇の船が避難してきたぐらい波静かな海ですから、養殖筏がたくさんありトラフグやマグロ、ハマチ、ブリ、タイなどを養殖しています。養殖で育てる魚は、大きくする必要があるので、栄養豊富な餌を与えています。
アジは夏の魚です。夏は餌が豊富で脂がのっていますが、冬場は餌が少なく脂が抜けて味が落ちます。ところが、伊万里湾のアジは年中脂がのっています。栄養豊富な餌が養殖筏の網から漏れており、それを冬場でも食べているからなんですね。
1年中脂ののったアジを食べることができるので、長崎県の水産部長から「まさに天然養殖ですね」と言われました。
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