忍びの里、陶芸のまち—甲賀に2つの日本遺産(2) リアルな甲賀流忍者を探る
忍術村や忍術屋敷、史跡 甲賀流忍者を追体験
今や世界中の人たちが魅せられている忍者。戦国時代を中心に活躍したとされるが、その実態はあまり知られていない。甲賀市は「甲賀流忍者」のふるさと。2017年には「忍びの里 伊賀・甲賀—リアル忍者を求めて」のストーリーが日本遺産として認定された。
日本遺産に認定された甲賀や伊賀(三重県)を歩くと、忍者屋敷がたたずみ、山中には忍者が修練の場とした行場があり、忍者が集結し合議した村々の鎮守の杜などが残る。また、甲賀・伊賀両エリアには合わせて約800の中世の城跡が残る。城跡といっても石垣はなく、忍者と関わりの深い地侍の城館跡。土を盛り上げ、一辺約50メートルの土塁で四方を囲み、土塁の高さは5メートル以上ある。
日本遺産を構成する甲賀流忍者を追体験できる施設を見ていこう。
「甲賀の里忍術村」のからくり屋敷は実在した甲賀流忍者の子孫の旧家屋を移築したもの。一見何の変哲もない旧家だが様々な仕掛けが隠されている。村内の甲賀忍者博物館には、忍術の秘伝書や手裏剣、水器、火器など約1400点の資料を展示。手裏剣道場、水上歩行器を使って池を歩く水ぐも体験など忍者の世界を疑似体験できる。入村料は大人1100円。
「甲賀流忍術屋敷」は甲賀流忍者・甲賀五十三家の筆頭格、望月出雲守の住居。元禄年間建造で、歴史的にも貴重な忍術屋敷だ。どんでん返しや落とし穴、からくり窓など様々な仕掛けが屋敷内に施されている。入館料は大人600円。
甲賀流忍者が修行した場所も残る。「飯道山」は、近江屈指の修験霊場。石垣で囲まれた寺院跡が残る。山頂近くには飯道神社が建つ。この山の修験者が甲賀流忍者の成り立ちに深く関わっているという。「岩尾山」「庚申山」と合わせ甲賀三霊山とされ、山伏の行場であるとともに、甲賀流忍者の修練場だった。
「多羅尾代官陣屋敷跡」は1582年の本能寺の変で堺にいた徳川家康が三河に戻る際、家康の手助けをした信楽の土豪、多羅尾氏の役所跡。「檜尾神社」と「大鳥神社」は忍者の合議の場であり甲賀衆結束の鎮守の杜。「油日神社」は、甲賀衆が崇拝した甲賀の総社で、油日神の懸仏(かけぼとけ)は忍者の守護神として信仰された。楼門や廻廊、本殿は国指定重要文化財。「櫟野寺(らくやじ)」は天台宗布教の拠点寺院で、本尊木造十一面観音坐像は重文坐像としては日本一の大きさを誇る。
「和田公方(わだくぼう)屋敷跡」は1565年、甲賀の和田惟政の手引きにより、奈良の一乗院を脱出した室町幕府最後の将軍・足利義昭が一時滞在した城館だ。
甲賀で忍者関連の地をめぐるとリアルな忍者像が浮かび上がる。敵情を探り、特異な戦いを仕掛けた集団としてだけではなく力を合わせ平和を守ろうとした衆だった—。
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