コロナ後を見据えて「よきよき なら旅」 奈良県・くすりのゆかりの地を巡る
アフターコロナを見据えた奈良県の新しい旅ブランド「よきよき なら旅」がスタートした。コロナ禍で落ち込んだ観光需要を、全国的には知名度の低い県内の観光素材にスポットを当てた周遊の旅で喚起する。近畿日本ツーリスト関西が事業を受託し、日本旅行など複数社と共同で旅行商品化。地域活性化につながる奈良の旅を構築する。
大手旅行会社が旅行商品化
よきよき なら旅は昨年12月にモニターツアーを実施。丑年にちなんだ社寺めぐり、ワーケーション施設の見学体験など7つのバスツアーを造成した。このうち日帰りの「奈良のくすりゆかりの地を巡る旅」に12月12日に参加した。
奈良県は古くから薬の生産地であり、薬草の栽培地でもあった。東大寺の正倉院には当時の薬が納められており、近世に「大和売薬」が確立し、現在に至るまで医薬品の製造と配置販売が重要な地場産業となっている。
ツアーでははじめに桜井市の狭井神社に参拝。医薬の神である少彦名命を祀り、病気平癒の神様として信仰を集めてきた。地元ガイドの丁寧な説明を受けながら、薬草が沿道に植えられている「くすりの道」を歩き、万病に効くという薬水が湧き出る井戸も体験した。
次の宇陀市は、日本書記にも「薬猟(くすりがり)」の記載がある日本最古級の薬のまち。日本を代表する製薬メーカー、ロート製薬、ツムラ(旧津村順天堂)、アステラス製薬(旧藤沢薬品)などの創設者も宇陀市出身だという。現在「薬の館」として公開されている細川家住宅は樟脳や薬問屋として財を成した邸宅。「森野旧薬園」は、江戸時代中期の薬園をほぼ当時のまま伝える国の文化財史跡。今も250種以上の薬草が育てられ、急斜面の園内は「本当は薬草に囲まれマスクいらずなのですが」(同園)。カタクリなどの花が咲く春から初夏は園内が鮮やかに彩られるという。「大願寺」は薬草料理を提供。特産の吉野葛の刺身は、時間が経つと硬くなってしまうため、出来立てをワサビ醤油でいただく。ドクダミなど薬草の天ぷらも思いのほか食べやすく美味い。
御所市では、創業700年来その製法がほぼ変わらない「三光丸」の工場とくすり資料館を見学した。三光丸の名は後醍醐天皇から授かったという。工場の倉庫では、良質のセンブリやオウバクが保管され、薬草の香りに包まれた。
そのタイトル以上に、奥深い奈良の歴史と文化の一端を垣間見たツアーだった。
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