山都町「橋ものがたり」 石橋から新進気鋭の橋まで
車歩二層式やバレイブリッジ
熊本県上益城地域には通潤橋をはじめ多数の石橋が架かる“石橋文化”が根付く。急峻な渓谷が多く、人馬の往来は危険を伴う難儀だった。そのため、この地域には江戸期に多く石橋が設けられ今も独特の景観をつくっているが、そのなかにあって山都町には近年、新進気鋭の橋が登場。古きよきものを守りながらも未来へと山都の“橋ものがたり”を紡いでいる。
肥後と日向を結ぶ古道「日向往還」の宿場町、馬見原地区はその面影を漂わせる歴史情緒豊かな町並みが広がる。馬見原商店街を散策していると、ひと際目を引く橋が見えてくる。「馬見原橋」だ。
五ヶ瀬川に架かる橋で、1995年に竣工。上は車道、下は歩道という二層式の斬新なデザインを採り入れている。歩道部分には2カ所大きな穴が開いており、川を橋上から眺められる仕組みを導入。清流を泳ぐ魚も見られるといい、散策にアクセントを加えてくれる。
緑川渓谷に行けば「鮎の瀬大橋」が架かる。長さ390メートル、高さ約140メートル、主塔の高さ70メートルという大きな橋で、横浜ベイブリッジを設計した大野美代子さんが設計、99年に竣工した。デザイン性を重視しメタリックオレンジのケーブルがモダンさを見る人に強く訴えかける。そのさまはまさに“バレイブリッジ”。土木学会デザイン賞最優秀賞も受賞している。橋のたもとからは谷の絶景を一望。紅葉の時にはその風景は一層映える。
現代を代表する橋と通潤橋の対比が、旅をより趣深いものにしてくれるのが山都町の橋ものがたりだ。
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