鳥羽で進む「漁観連携」 海女など文化守り活性化
海の文化の保護、発信に官民連携
観光のまちであり、漁業のまちでもある鳥羽市では「漁観連携」が進んでいる。主要産業である漁業と観光業が協力して課題を解決、まちの活性化につなげようという取り組みだ。
鳥羽の観光にとっては海の恵みは欠かせない資源。海女さんは地域の文化として観光面でも活躍する存在だが、漁業にとっては観光への意識はかねてから高くはなかった。だが、アワビの漁獲量減、漁業関係者の後継者不足や海女さんの減少、魚介類の地域ブランドとしての確立など課題を多く抱える中、鳥羽市観光協会、市、鳥羽磯部漁業協同組合の意識が一致。2014年から連携事業をスタートさせた。
以降、協議を重ねながら協力への意識を醸成。鳥羽の海産物の情報発信、地産地消、海を舞台にした体験、海女さんや食文化の保全、漁業の活性化を戦略分野として取り組みを展開し、「鳥羽の海」ブランドの価値を高めてきた。
観光面で目立った取り組みは、地元の干物文化を発信する「HOSUプロジェクト」や、離島でのワカメ養殖作業体験ツアーや海女文化と歴史を学ぶツアーの実施など、地域文化を色濃く反映させた企画を旅行者向けに実施した。
漁観連携を進める中で、やはり力を入れるのが海女さん文化の保護だ。鳥羽市観光協会は、高齢化などにより海女の数がピーク時の3分の1までに減少している現状を危惧。観光と漁業の柱を次世代にまでつなげようと、市内宿泊施設と連携して「海女さん応援企画宿泊プラン」を設定した。宿泊費の一部が海女文化の維持のために寄付され、集まった基金で後継者の育成やアワビの稚貝放流につなげた。
アワビの減少は海女さんの減少にもつながる。漁観連携事業の一環で、繁殖時期のアワビの産卵促進を行うことでアワビの増殖を図る「アワビ増殖・出逢いプロジェクト」を展開。地域文化の保護へ本腰を入れている。
また、17年には市内の漁業者や観光事業者、市観光協会、大学が連携し、「鳥羽渚泊推進協議会」が設立。大学生の支援を経て高齢化に悩む漁村の活性化を図ろうというもので、同年には国の農山漁村振興交付金事業にも採択されるなど、地域全体に漁観連携は広がりをみせている。
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