伊勢志摩国立公園の観光振興 エコツー推進へ官民一体で協議会設立
「保全と活用」観光戦略を展開
国がインバウンド誘客に向け、日本の大きな魅力として国立公園を「ナショナルパーク」化する活動を推進するなか、三重県では2月、伊勢志摩国立公園の一層の観光資源化を図ろうと「伊勢志摩国立公園エコツーリズム推進協議会」が設立された。
参画するのは県や伊勢鳥羽志摩地域の各市町や観光協会のほか、旅館ホテルや観光施設、旅行会社、漁業協同組合など官民が一堂に集結。なかでも民が強く関わるなど、文字通り地域一体で伊勢志摩ならではのエコツーリズムを強力に推進していく。
伊勢志摩国立公園はリアス式海岸周辺の海山の風光明媚な景観が、古くから訪れる人の心を癒してきた。その96%が民有地であり、自然と共生した暮らしの中から独自の文化が育まれてきた地域特性を持つ。だが、これまでの観光としては自然体験活動が個々の事業者の裁量で実施され、地域全体の戦略が確立されていないということが課題だった。
これを受け、地域では伊勢志摩国立公園の観光振興を地域一体で図る手段として、エコツーリズムが最適と判断。すでに自然保護と活用を兼ねたエコツアーが盛んであることや、地域が一体で取り組み、より質の高い観光を実現するためにはエコツーリズムが適しているとされることがその理由だ。
同協議会は、2月に設立総会を開催。会長にはこれまで地元でエコツアーを手掛けてきたオズ(海島遊民くらぶ)社長の江崎貴久さんが就いた。4月には第1回総会を開き、SDGs実現部会、人材育成部会、マーケティング部会、事業部会の4部会を設立、以降積極的に部会活動を展開している。
協議会が掲げる伊勢志摩国立公園のエコツーリズムの基本理念は「伊勢志摩への旅を通じて自分の大切なものを再認識してもらう」「訪れる方とともに持続可能な観光地域づくりを行う」。観光事業者、漁業関係者、そして観光客というステークホルダーがルールに則った資源の活用、利用者負担による資源の保全をモットーに、里山・里海、歴史文化という地域資源と関わっていく関係性を築くことが基本的な考えだ。
具体的な取り組みとして、短期的には、関係事業者の支援と、エコツーリズム法に基づく「伊勢志摩国立公園エコツーリズム推進全体構想」の策定を図る。長期的にはエコツーリズムの地域産業としての育成や、それによる地域貢献を追求していく。
これを実現するために設けたのが、実働部隊である各部会だ。
SDGs実現部会は、伊勢志摩国立公園エコツーリズムの理念の普及、事業部会はエコツーリズムを通じた地域振興が目的。人材育成部会はエコツーリズムの担い手やガイドの育成、プログラムの磨き上げなどを担当する。マーケティング部会は伊勢志摩国立公園のブランド力向上や市場開拓、宿泊・運輸・旅行会社との連携などエコツーリズムの観光事業化を担う。
この4部会が「四位一体」となって実効性ある取り組みに昇華させようという考えだ。
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