「日本最古の湯」現代に蘇る 道後温泉別館「飛鳥乃湯泉」オープン
瀬戸内地域との連携、俳句、城などまちの魅力を前面に、独自の観光振興策を積極的に展開する愛媛県松山市。そんな松山の観光の中心に座る道後温泉に9月26日、新しい外湯施設「飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)」がオープンした。道後の100年先をも見据えたまちづくりのひとつの中心となる施設の誕生で、松山観光の〝懐の深さ〟が一層増した。
約30年ぶり新温泉施設 皇室専用の浴室も再現
松山市・道後温泉に9月26日にオープンした新たな外湯施設「道後温泉別館・飛鳥乃湯泉」。西暦596年に聖徳太子が入浴したと伝わる道後の歴史から、飛鳥時代の建築様式を採り入れた歴史の趣に満ちた空間で、温泉は本館同様に源泉かけ流し。道後としては約30年ぶりとなる新しい温泉施設の誕生で、新しい観光拠点として期待が集まる。年間30―40万人の利用者を見込み、開業当日から多くの観光客が詰めかけるなど上々のスタートを切った。
同館は、温泉街の既存の市営温泉施設「椿の湯」西側に新設。市が2015年度からスタートさせたまちづくり計画「百年輝き続きる最古の湯・道後―外湯文化を受け継ぐおもてなしの環(わ)」の一環で、3千年の歴史を誇り日本三古湯のひとつである道後温泉の特徴から「日本最古の湯を再現した空間の創出」をテーマに建設が進められていた。
建物は地上2階建て、延べ床面積約1600平方メートル。本瓦葺きに朱色の柱といった飛鳥時代の建築様式を取り入れ、屋根の上には道後のシンボルである塔屋と一対の鴟尾(しび)を配置した。中庭は聖徳太子が来浴した際に詠んだとされる「椿の森」をイメージし、椿が生い茂った当時の歴史的情景を12月末ごろに再現予定。
館内に入ると、ゼオライト和紙で神聖な雰囲気を演出。身心を清める温浴へと誘う山門をイメージしたシェードで出迎える。そのほか、奈良・薬師寺西塔の再建でも使われた「千年の釘」で知られる和釘を使って巨大な湯玉を描いた装飾壁など細部へのこだわりが館内に施されている。
1階に開放的な男女大浴場と、本館にはない露天風呂を備え、源泉かけ流しの湯を楽しめる。大浴場には砥部焼による陶板壁画を壁面に配し、道後にまつわる和歌の風景を演出している。
2階にある道後温泉本館の皇室専用の浴室「又新殿(ゆうしんでん)」を再現した特別浴室では、一定以上の身分の人が湯浴みで身につける昔の浴衣「湯帳(ゆちょう)」を着て、飛鳥時代の入浴を体験することもできる。
また、2階には約60畳の大広間、休憩室を設置。お茶と菓子が楽しめる。コンシェルジュによるおもてなしも行う。白鷺や玉の石、聖徳太子の来浴といった道後の伝説をモチーフにした個室休憩室5室も設けた。
館内は「太古の道後」テーマに、和紙や砥部焼、漆器といった愛媛の伝統工芸と、松山市が近年取り組んでいるデザイン・アートとのコラボレーション作品を展示し、新しい温泉文化の世界観も発信していく。
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