山海に春の訪れ告げる桃の節句(1) 和歌山・加太
記録的な暖冬にあっても、やはり春を渇望する心は変わらない。その春の訪れを感じさせてくれる桃の節句が、もうそこまで近づいている。日本各地で古くから伝わる雛祭りが開かれ、地域文化を伝承。艶やかな雛飾りが地域の人たちだけでなく、旅人の心にも春の彩を灯してくれる。今年も山は岡山美作、海は和歌山加太をメーンに各地の文化を紹介。春の観光シーズンは雛祭りから−。
「雛流し」 雛祭りの起源を体感する
海の雛祭り行事は、和歌山市加太にある淡嶋神社へ。毎年3月3日に行われる「雛流し」は、女性の願いを込めた雛人形を舟で海へ流すという伝統の神事。雛祭りの起源ともいわれるこの地に、全国から多くの女性が集う、特別な1日になる。
同神社は1700年以上の歴史を持つ、全国の淡嶋神社、粟島神社などの総本社。特に女性の病気回復や安産・子授けなど女性の願いにご利益があるとされ、「女性のための神様」として全国から信仰を集める。
雛祭りと同神社の関係は、御祭神で薬の神様とされる少彦名命(すくなひこなのみこと)と神功皇后の男女一対の御神像が男雛女雛の始まりで、雛祭りの日程、語源もこれに関係するとされる。紀州徳川家は代々、姫の初節句の際に雛人形の奉納を続けてきた歴史もあり、現代になっても全国から雛人形が寄せられることからも全国的な信仰の厚さがわかる。
「雛流し」は、全国から奉納され、願いごとが書かれた雛人形を本殿でお祓いした後、白木の舟に乗せて雛祭りの歌とともに海へ送り出すことで供養するというもの。
正午から始まる神事には例年、全国から多くの女性が参加。雛人形には女性の成長と幸せへの願いが込められ、参加した女性たちは幼いころから親しんだ雛人形が白波の間を進んでいく様子をじっと眺め、感謝と願いを祈る。
同神社のある加太は万葉の時代に歌に詠まれた景勝地。眼前の海がつくる風光明媚な景観、夕陽が美しい、「女子旅」にうってつけのスポットだ。
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