念願の着地型商品開発へ始動 徳島県三好市と香川県琴平町、今秋初の住民相互交流
徳島県の三好市観光協会(大平克之会長)と香川県の琴平町観光協会(漆原康博会長)は、2018年に観光推進協定を結び、県境を越えて共同で観光推進を図っている。2地域間にはJR四国が観光列車を運行し、18年末には国道32号猪ノ鼻道路が開通。心理的・時間的距離の短縮も実現した。住民交流、周辺地域を含めた観光資産の共同アピールなど観光客誘致に取り組んでいる。
交通改善機に連携協調 心理的距離が縮小、周遊観光の気運に
観光推進協定の一環として10月16日、三好市と琴平町を結ぶJR四国の観光列車「四国まんなか千年ものがたり」を利用した相互交流事業が行われた。2市町でそれぞれ50人が参加し、総勢100人が交流した。
三好市民グループは琴平町を訪ね、旧金毘羅歌舞伎「金丸座」や琴平参道を散策。琴平町民グループは三好市を訪問し徳善・襖からくりや大歩危峡観光遊覧船などを見て回り、互いの魅力ある素材に触れた。
参加者の一人は「近隣なので知っているつもりでいましたが、地元の方にご案内いただくと、景色が違ったもののように見えてきます。こういった交流をすることで、お互いが身近な存在になるので大事なことですね」と話していた。
協定締結のきっかけは、この観光列車の運行開始だった。もともと両市町はJR四国の土讃線で結ばれているが、四国で2番目の本格的な観光列車として「四国まんなか千年ものがたり」の運行が17年に始まり、観光ルートとしての距離感が一気に縮まった。
同列車は、香川県・多度津駅―徳島県・大歩危駅間という四国中央部を結び、沿線には善通寺や金刀比羅宮、平家落人伝説のある祖谷など、1千年の歴史文化が凝縮している観光資源が点在していることから命名された。そこで、互いに「千年ものがたり」を有する三好市と琴平町および2市町の観光協会の4者は地域観光を盛り上げる好機と捉えた。
観光推進協定の締結は運行開始から1年経った18年。以降、「いけだ阿波踊り前夜祭」や「ことひら夏夜市」「金刀比羅宮例大祭」など、それぞれの行事に関連して相互交流を行ってきた。
さらに21年10月には、琴平町の片岡英樹町長と漆原会長が「千年ものがたり」に乗車して、三好市を訪問。三好市の高井美穂市長、大平会長と意見を交わし、大歩危・祖谷の観光地を視察した。
そうした中で、感染状況も落ち着いてきたことから今回、多くの住民が直接関わって事業を初めて行うことができた。これまでの行政や観光関係団体の交流から、地域住民同士の交流へ広がったという意味で、今回の事業が持つ意義は名実ともに“官民連携”へ大きな一歩を踏み出したと言えそうだ。
一方、両市町にとっては18年12月に完成した国道32号「猪ノ鼻道路」の存在も小さくない。琴平町から三好市池田町までが30分、大歩危・祖谷地域までは1時間で結ばれるようになった。観光列車に加えて、道路開通効果もあったわけだ。
大平会長は「時間短縮の効果としては弱いという意見もありますが、曲がりくねっていた道路が4つのトンネルと4つの橋が組み合わさって、ほぼ一直線で結ばれたことは精神的な距離感が短くなりました。マイカーだけでなく、バスでも琴平町と三好市が行き来しやすくなりましたから、今後様々な企画提案を考えることができます」。交通網の改善が観光推進の後押しになったと語る。
漆原会長も「現在は、三好市と琴平町の連携協定ですが、共同事業がうまく進めばこれから隣接市町村との連携も視野に入ってくる可能性があると期待しています」と、さらに広域な観光周遊と滞在エリアとしての魅力創出に意気込む。
連結協定から4年。地域住民が加わった新たな展開が進みだしたところで、当初から念願していたエリアをめぐる着地型商品などの企画造成に期待が高まる。
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