新しい色合いへのいざない―タイ紀行(3) 古都チェンマイ―食文化とまちの輪郭を知る
タイ第2の都市、チェンマイで1月24―27日、ATF(アセアン・ツーリズム・フォーラム)が開催された。「アメイジング・タイランド」はそのままに、ATFで公式に発表されたタイの新たなコミュニケーション・コンセプトは、タイの多様性に焦点を当てた「Open to the New Shades 新しい色合いへのいざない」。ATFの期間中、チェンマイを訪れ、タイの文化や食の多様性、「新しい色合い」を体感した。
世界の旅行者が行き交うまち 歴史を知れば旅もまた楽し
初めてのプーケット旅行以来、タイへは、今回のようなメディアツアーも含めて、たぶん8回目の訪問。バンコク滞在と、バンコクからタイ最南部のスンガイコロクまで夜行列車で旅したのを除けば、ビーチ以外の都市に滞在したのは今回が初めてだった。初めてのタイ北部に加え、日本語ガイドと行動をともにできたことで、タイの「新しい色合い」に触れることができた。
古都・チェンマイへはバンコクから飛行機で1時間20分ほど。日本からの直行便はないが、東南アジア諸国や中国、中東からの路線が多数乗り入れている。朝、成田を発ってバンコクで乗り継いでチェンマイに着いたのは夕刻。空港からチェンマイ市街までは車で20分ほどと近い。ホテルにチェックインしてから、同行のタイ国政府観光庁のスタッフにお願いして夕食をともにしてもらった。プロモーションなどで月に一度は訪タイしているという、タイ語も堪能な彼女。初めてのチェンマイで、うまいローカルフードにありつくには、最適な案内役だ。
ホテルを出てすぐのチャンクラン通りは、すでにナイトバザールで賑わっている。道の両側の歩道に長さ500メートルほどに渡ってストールが連なり、世界中からやってきた旅行者が行き交っている。チェンマイは、世界でも名の通ったタイ有数の国際観光都市でもあるのだ。
通りに面したレストランで、わがままを言って、自分では注文できそうにないタイ北部の料理など数種類をアラカルトで頼んでもらい、スパイシーなチェンマイ料理をシェアさせてもらって、初日から全開のタイ料理に、乾杯はタイのシンハービールで。
翌日はまず、地元の人も観光客も多くが訪れるドイ・ステープ寺院を、日本語ガイド歴10年ほどのタイ人女性ジェーンさんの案内で訪ねた。標高1千メートルの山頂に位置するドイ・ステープまでは市街地から15キロ・約50分ほど。この間、車中でのジェーンさん説明で、チェンマイの輪郭をずいぶんと理解することができた。
チェンマイに都が開かれたのは今から720年ほど前の1296年。北部の都市、チェンライに興ったランナー王朝がこの地に遷都したのが町の始まり。「一億枚の田んぼ」を意味するというランナーの名の通り、市街地を外れると広範に豊かな田園地帯が広がっているという。
人口170万人、チェンマイはおよそ標高300メートルの盆地にあり、旧市街地は一辺1.5キロほどの城壁とお濠に囲まれている。一部に古い城壁を見ることができ、城壁の内外に90を超える多くの金色の寺院が点在している。チェンマイからさらに北へ、山岳地帯には少数民族が暮らし、独特の生活様式や文化や食、アートが継承され、それらはチェンマイで今も体験することができる。
チェンマイは北部に連なる山岳地域で、ミャンマーやラオスと国境を接し、他民族、他国の文化がせめぎ合い、絡み合う地域でもあり、中世から近代にかけ、ミャンマーなどからの侵略や占領を経験した。
今の季節11-2月は乾季で、当日朝の気温は20度ほどだった。昼にかけて30度近くまで上昇したけど、乾いた気候で日陰では過ごしやすい。3月を過ぎると暑さが増し、6月くらいまでが乾いた夏が続く。そして夏真っただ中の4月、タイは正月(ソンクラーン)を迎える。4月13―15日がタイの正月で、全国で水かけ祭りが行われる。
気候や物価、治安などの住みやすさから、チェンマイには3千人ほどの日本人が暮らしている。退職後に移住する人も目立つが、日本の冬を避け、乾季に数カ月ほど滞在する人も多い。世界中からのそうした中期滞在の需要に応えるため、数カ月、比較的廉価で滞在できるサービスアパートメントも増えている。
こうした外国人居住者の増加や、数年前にタイを襲った大洪水の後、バンコクからチェンマイへの移住者が増え続けていることで、新しくおしゃれな商業施設やカフェが集積するエリアができ、新たなチェンマイの魅力になりつつある。
(東京総局長・阿部政利)
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