まんなかの秘境を歩く “四国の旬”を訪ねて後編(1) 大歩危からかずら橋−自然と歴史の深さ体感
JR四国の招きで訪れた四国への旅。1日目は瀬戸内国際芸術祭夏会期開催が迫る香川県小豆島を巡り(前号掲載)、2日目は徳島県大歩危祖谷へ。海から山に舞台を変え、四国の“まんなか”の魅力に迫った。
雨が演出する幽玄の美 山間部だからこその魅力
2日目もあいにくの雨模様だったが、JR高松駅から特急しまんとで大歩危へ。大歩危といえば大峡谷。その渓谷美を間近で体感できる「大歩危峡観光遊覧船」に乗船した。船頭さんと地元ガイドの案内で、四国山地を縫うように走る吉野川の激流が形づくった巨岩や奇岩を眺めながら大自然のパワーに圧倒される。雨に煙る峡谷の静寂、幽玄の世界が秘境の郷の風情を一層醸し出す。
大歩危・小歩危や祖谷渓をはじめとするエリア一帯では「三好ジオパーク構想」が進んでいる。大渓谷、剣山など大自然と、天空の郷として知られる落合集落での暮らし、文化を伝えるもので、この日もガイドから自然景観の成り立ち、傾斜地の農業スタイルなど固有の風土を聞いた。
昼食は西祖谷の「祖谷美人」で郷土料理「祖谷そば」を味わう。大きな甘い揚げの乗った「ぼけあげそば」を祖谷渓谷を見下ろしながらすする。
大歩危祖谷を代表する観光スポット「祖谷のかずら橋」。源平合戦で敗れた平家の落人が作ったと伝わるもので、秘境感を一層増してくれる存在。「落ちる人はいませんよ」と聞いていたにしても、雨の中渡るのはなかなかスリリングだった。正直、橋の上からの景観を楽しむ余裕はなかったのが悔やまれる。次は晴れた日に。
その平家伝説を伝えるのは「平家屋敷民俗資料館」。慶応3年建築で、茅葺き屋根、囲炉裏など造りは実に重厚。屋根に生えた苔から雨水が滴り落ちる光景は情緒十分だった。管理する岸田美恵子さんは「ここだけの一瞬の美しい風景をカメラに収めたい。このエリアは自然や文化など本当にいいところ。もっと多くの人に知ってほしい」。
大歩危の旅のラストは「歩危マート」。住民の暮らしを支える食料品店だが、食事処、土産販売と観光のひとつの顔でもある。そしてオーナーの山口由紀子さんが底抜けに明るい。名物の巨大な揚げ「ぼけあげ」を振るまってもらい、地域を支える“おばちゃん”のパワーにKOされた。
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