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漁観連携を推進 海で培って鳥羽文化を保全

温泉まちづくり支える「環境」 先進地・鳥羽の取り組み

鳥羽温泉郷が進める温泉まちづくりのテーマのひとつが「環境」。海と生きてきた地域文化を支えるため、現在抱える課題に対し、観光業と漁業が連携して取り組みを進め環境対策の先進地ともいえる存在感を確立してきた。全国の温泉地が参画する温泉まちづくり研究会の23年10月の会合の舞台となった鳥羽。ここではその鳥羽の取り組みが発表され、各温泉地がその知見を共有した。

開催地代表のあいさつで鳥羽市温泉振興会の吉川勝也会長が「鳥羽の観光業と漁業は業界の枠を越えて連携し、お互いがなくてはならない存在になっています。今回はその現状を見てほしい」と話した。

鳥羽市では人口1万7千人に対し、年間観光客は430万人で、そのうち170万人が宿泊するなど観光地として存在感を確立している。そのなかで、鳥羽が抱える課題について、同振興会の山下正樹業務推進アドバイザーは「近年、鳥羽付近の海域では磯焼けや黒潮の大蛇行で海藻場がなくなり、魚介類が減少しています。三重県内の海女は現在500人で50年前の8分の1になり、海とともに培ってきた文化の保全が求められています」と話す。

鳥羽市観光協会は、そうした危機的な状況から海女さん応援基金を設定。鳥羽市水産研究所は海藻・海洋環境などに関する研究を行い、鳥羽の海のレッドデーターブックを発刊している。漁師など漁業従事者も海の植林活動などに取り組むなど、観光や漁業など地域一体となって積極的な連携が図られているのが鳥羽の強さだ。

研究会では戸田家の宍倉秀明業務支配人が1990年代に始めた生ごみの堆肥化や調理残滓を活用した真鯛の養殖への貢献を報告。サン浦島悠季の里の吉川好信常務は、地域の漁業従事者と地域イベントなどを通じた交流が生じたことで社員の定着率が向上したことなどを報告した。

鳥羽で自然体験ツアーを実施している海島遊民くらぶの江崎貴久さんは、漁業と観光業による“漁観連携”で生産者の消費者の関係が深化したことや、鳥羽の海産物に関するステークホルダー間を調整するなど自身のブランドマネジメントについて説明。団体で、個々で活動が生まれ、鳥羽の人たちに環境への意識醸成が進んでいる。

研究会の2日目は石鏡漁港の海女小屋で現地視察。海女兼フォトグラファーの大野愛子さんから海女としての活動や撮影を通して感じた鳥羽の海の変化などを肌で感じた実感に触れ、参加者は自身の地域へ知見を持ち帰った。

温泉まちづくり研究会

鳥羽市内の漁港を視察し
漁業従事者と懇談する温泉まちづくり研究会の皆さん

温泉まちづくり研究会は、温泉地が抱える共通課題の解決策を探り温泉地の活性化を目指そうと2008年に日本交通公社が創設した。現在、鳥羽温泉郷のほか阿寒湖温泉(北海道)▽草津温泉(群馬県)▽有馬温泉(兵庫県)▽道後温泉(愛媛県)▽由布院温泉(大分県)▽黒川温泉(熊本県)の7温泉地が参画。22年度からは3年間にわたって「環境」をテーマに研究を進めており、環境対策を進める鳥羽温泉郷に白羽の矢が立った。

なお、鳥羽市ではこのほどジャパンブルーエコノミー技術研究組合が認証・発行する「鳥羽港周辺海域の漁業と観光業連携による海女文化・地域振興に資するBC(ブルーカーボン)プロジェクト」のJブルークレジットを購入。「夏の鳥羽湾毎夜連続花火」の実施により排出したCO2をオフセットするためにも活用する予定で、環境の維持・保全活動に尽くす。

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