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E−DMOが下呂の基盤 下呂温泉観光協会・瀧康洋会長に聞く(1) 観光DX化で地域主導に

マーケティングとマネジメントを融合させ、地域の観光資源を掘り起こす「E−DMO」に取り組んできた一般社団法人下呂温泉観光協会。同協会の瀧康洋会長(水明館)に、下呂温泉がコロナ禍のなか、どのように考えて活動し、どういった方向に進もうとしているのかを聞いた。

DMOは「まちと未来を変える力がある」

−コロナ禍は3年目に入りました。この間の状況と、どういった対策を取ってきたのかを教えてください。

2021年度の下呂温泉の宿泊者数は58万2564人でした。前年対比でみると7万66人、113・7%の増加となりました。全国の観光地が苦戦を強いられている状況のなかでは、いい成績を残すことができたのではないでしょうか。

これは下呂市内の観光協会や下呂温泉旅館組合、下呂商工会、下呂温泉合掌村、下呂交流会館、下呂市などが一体となって毎月戦略会議を開きながら、観光・宿泊の動向を検証し、誘客宣伝を行ってきたからこその結果だと思っています。

コロナ禍で緊急事態宣言が発令されたときにも、旅館組合が中心となって感染防止のガイドラインをすばやく作成し、エコツアー・体験商品のガイドラインも作って受入体制を整えました。

各地の観光協会や旅館組合などの多くは感染を懸念し、プロモーションを実施しませんでした。しかし下呂温泉では「下呂温泉に来てください」ではなく「下呂温泉にはこれだけすばらしい温泉や自然があるんですよ」などのデジタルプロモーションを実施しました。

キャラバンについても、こういった機会を好機と捉え、全国の中小旅行会社を重視し、下呂温泉観光協会が主体となって20年は375件、21年は346件を訪問しました。キャンペーンも行い20年は34カ所で約1万部、21年は26カ所で約2万2千部のパンフレットを配布しました。

下呂市が用意した助成金の説明も併せて行っているので、現在も九州や東北の旅行会社からの送客があるのは、こういったキャラバンが効いているからだと思います。

下呂温泉の集客の特徴はエコツーリズムとDMOを融合させたE−DMOに取り組んでいることです。DMOにおける宿泊施設などと連携したデータ収集と分析事業のおかげで地域内の宿泊施設や観光施設を訪れる観光客のデータを得ることができます。そのデータで各施設を利用した観光客の属性や消費額、個人の購買傾向など観光客の具体的なニーズを把握することが可能になります。それに沿ってプロモーションをかけることが可能になってくるわけです。

いってみればDMOが、より確実に機能することで地域主導になり観光客の質・量ともにコントロールできるんです。

瀧康洋会長

瀧康洋会長

−具体的に活動された事例を教えてください。

今、下呂温泉街には11店舗13種類のスイーツ店がありますが、これは15年に下呂温泉を訪れた観光客にお願いしたアンケート1万件の結果によるものです。アンケートで「下呂温泉街の施設に何を望みますか」と聞いたところ、食べ歩き、スイーツという要望があることがわかりました。いわば「食べ歩きで何かがほしい」というお客様のニーズに対応するためには下呂温泉らしいスイーツの開発・プロモーションが必要であることが明らかになったわけです。

観光客の滞在時間延長と消費行動の喚起を促すにはスイーツに関する開発が必要という判断から、スイーツの開発や店舗誘致を行う一方、雑誌やテレビ、ラジオなどでの広告を行いました。

初年度は4店舗4施設でしたが毎年2、3店舗ずつ増え、コロナ禍になっても増え続けて現在の11店舗になっています。

アンケートや下呂温泉を訪れた観光客の属性を分析しての成果は、このスイーツの一例だけでもDMOは「私たちのまちと未来を変える力がある」ことがわかります。

当初はDMOだけでしたから販売やプロモーション、マーケティングの強みはあったものの、下呂温泉と小坂、萩原、馬瀬、金山といった5つの異なる地域では集客力や人的・金銭的な資本力が違うため、DMOの機能が発揮しにくかったという事情がありました。

エコツーリズムは地域全体の観光資源の掘り起こしと環境保全が大命題ですから、5地域の人たちが掘り起こした観光資源にマーケティングとマネジメントの手法を取り入れることで、下呂市全体を捉えた展開ができるようになったわけです。その点からもE−DMOは下呂温泉にとって大きな意味を持っています。

E−DMOが下呂の基盤 下呂温泉観光協会・瀧康洋会長に聞く(2) 「観光は水の如し」の対応で に続く

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