観光業界専門紙「トラベルニュースat」おすすめ国内魅力再発見の旅

今秋解体、「ありがとう」を込めた巨大アート 神戸ミューラルアートプロジェクトへ(1)/兵庫

GoToイートキャンペーンが各地でスタートし、GoToトラベルキャンペーンに東京発着も加わり、全国的に外出ムードになってきました。この夏、新型コロナの影響を受けて外出や旅行を控えた人がいた一方、感染予防対策を凝らしたグランピングやドライブシアターなどの屋外レジャーが好調でした。芸術の秋、どこに出かけますか。どこに行こうか検討している方に、換気や3密を気にせず鑑賞できる屋外アートを紹介します。

キャンバスは神戸市役所2号館

今回ご紹介する屋外アートは、兵庫県神戸市で見られる「神戸ミューラルアートプロジェクト」の6作品です。

ミューラルアートとは、許諾を得た壁に描く作品のこと。壁画といえばバンクシーを思い浮かべる方もいらっしゃると思いますが、バンクシーは許諾を得ていない壁に社会に向けて問題提起をする作品を人知れず描きます。それに対し、このプロジェクトは、壁の所有者に許諾を得ていて、制作の過程も見せています。広告や意匠・看板の意味を持たないため、壁の所有者の意向よりもアーティストの創作性が優先されているのも特徴です。

今回キャンバスとなった壁は、JR三ノ宮駅から徒歩数分、神戸市役所2号館です。

神戸市役所2号館は、1995年の阪神淡路大震災の折に地上8階建ての6階部分が押しつぶされながらも、修繕して5階建てとして使用されてきました。使用開始から63年、老朽化に伴って今秋以降、解体工事が決定しています。

一般的な建築物は、スクラップ&ビルドという考え方で、老朽化するとそのまま取り壊しますが、神戸市役所2号館においては、震災後の日々を共にしてきて「ありがとう」の気持ちを込めてアートで彩って送り出したいという、有志の想いからスタートしました。アーティストが使用する画材や滞在費、高所作業車などの費用は、クラウドファンディングを通じて800人以上の支援を集めました。そして、現場の運営は、近隣の住民やビジネスパーソンなどの市民が積極的に参加しました。

神戸市役所2号館

上空から見た神戸市役所2号館(奥)
と防音壁(手前)

当初5月に完成予定でしたが、新型コロナ感染拡大の影響を受けてプロジェクトをいったん休止し、7月に再開。長引いた梅雨の合間をぬって、2号館南面を描いたのは、チチ・フリークさん。太陽が動いて光の当たり方によって見え方が違ってくることを意識して、数種類の赤のスプレーを丁寧に塗り重ねて、繊細な色のニュアンスを表現していきました。

神戸ミューラルアートプロジェクト

8月は、湿度が高く、気温40度に迫る酷暑。アーティストたちにとっても過酷な環境でした。灼熱の太陽の下で、高所作業車に乗って作業するのは、アートユニットのヒトツキ。SASUさんはハケを、KAMIさんはローラーを使って、青空に映える、すがすがしく美しい作品を仕上げていきました。

神戸ミューラルアートプロジェクト

神戸市役所2号館の2面に加え、クーリングタワー(冷却塔)の防音壁の3面および神戸市役所2号館南側1階には、若手アーティストらが「神戸」にちなんだテーマで描いていきました。

神戸ミューラルアートプロジェクト

神戸ミューラルアートプロジェクト

「ありがとう」の想いが詰まった、巨大な壁画が見られるのは、2020年10月中旬くらいまでの予定。解体開始日が発表されていませんので、早めにお出かけいただくことをおすすめします。

(旅した人:サガワミユキ)

(次の記事)今秋解体、「ありがとう」を込めた巨大アート 神戸ミューラルアートプロジェクトへ(2)/兵庫

この記事をシェアする
今すぐにでも出たくなる旅 最新
個性全開、輝き増す山陰紀行・島根鳥取西部編

島根県では美肌県を前面に、2023年に高視聴率を記録したテレビドラマ「VIVANT」のロケ...

個性全開、輝き増す山陰紀行・鳥取東部三朝編

「蟹取県」「星取県」に続き、辰年の今年は「とっとリュウ県」―。県の形が龍に見える?ことから...

「光る君へ」稀代の女流作家の足跡求め・滋賀大津

後世に深く濃く語り継がれる名作を描いた女流作家は、混沌とする世の中を、愛を持って駆け抜けた...

購読申し込み
夕陽と語らいの宿ネットワーク
まちづくり観光研究所
地旅
関西から文化力
トラベルニュースは
文化庁が提唱する
「関西元気文化圏」の
パートナーメディアです。
九観どっとねっと
ページ
トップへ