上高地を歩く’18 訪日客も認める多様性(2)
感じる価値は人それぞれ
「1年ほど日本に滞在しています。働いたりハイキングしたり」
ニュージーランドから来たフロリアンさんは、この冬の数カ月、長野県野沢温泉のホステルで働き、最近は熊野古道の伊勢路を含む約250キロを12日間で歩いたそう。上高地へはネットでハイキングを検索したら、「上高地に行け」と。
ビジターセンターでハイキング情報を仕入れてきた。「涸沢にテント泊して、明日は涸沢岳に登ります。今年は雪が少ないからアイゼンなしでも大丈夫だそうです。今日はニホンザルが見られてよかったです。スノーモンキーですか。あそこはお金がいりますが、ここのサルは無料でしょ」。
上高地では観光のポジティブな要素としてニホンザルを扱っていないけど、相変わらずヨーロッパや北米、オセアニアの人に人気がある。
明神館を左に折れて、上高地のもう1つの吊り橋を渡って明神池方面へ向かう。嘉門次小屋の前の小さな橋で渓流のイワナをのぞきこんでいたのは、ロンドンから来たジェンナーさん一家。
「2週間の日本旅行を楽しんでいます。京都、奈良、日光に行きました」。上高地の印象を尋ねると、「ヨーロッパのアルプスよりいいですね」とリップサービスしてくれる。なにより木の種類が多いのが気にいったそう。後ろの針葉樹を指さしながら「イギリスには、その木一種類しかありません。全部その木」と、大げさに植生の多様性をほめてくれた。
明神館まで戻り、外のテーブルで生ビールを飲んでいると、盛んに写真を撮っている2人組がいた。香港から来たステファニーさんとジェシカさんは友人。前日は立山・室堂の雪の大谷を観光したという。立山黒部アルペンルートと上高地の組み合わせは、海外からの旅行者にも山岳高原のゴールデンルートになっている。
「上高地に来るまで、前に上高地に来たことを忘れていました。そのときは団体旅行だったからかもしれません」
今回は個人旅行だから自由度も高い。丸1日、ゆっくりハイキングを楽しむことができている。新島々のゲストハウスに宿泊し、明日は乗鞍高原に行こうと思っている。
上高地は、国道158号線から釜トンネルを抜け、大正池から最奥部の横尾まで梓川沿いに続く約10キロ、最大幅1キロの渓谷。標高は1500メートル。全行程ほぼ平坦で、遊歩道が整備されている。海外からの観光客やハイカーも増え続けている。
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