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【安来】いい旅いい夫婦

昨年の流行語大賞に選ばれ、近年にない高視聴率を記録した連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」。ヒロインの故郷として一躍脚光を浴びたのが島根県安来市だ。市内の観光入り込み客数は10%以上増え、生家のある大塚町にはツアー客が押し寄せるほどだった。安来市ではポスト・ゲゲゲの女房として、普段は言えない「ありがとう」を伝える旅をテーマに「安来 いい旅 いい夫婦」をコンセプトに掲げた。

2人だけの旅 「ありがとう」の言葉を妻に

「行ってくるよ」と声を掛けた。もう一度言ってみる。生返事が返ってきた。テレビに夢中らしい。子どもたちが独立して、妻は時間に余裕ができたのだろう。少し前まで「忘れ物はない? ハンカチ持った?」という妻の慌しい声で始まっていた朝が嘘のようだ。

玄関で靴を履いていると嗚咽が聞こえた。「どうしたんだ?」。

それが、そのドラマとの出会いだった。

毎朝、そのドラマを見て出社するのが習慣になった。ある時、妻が言った。「安来に行ってみない? 少し遠いけど。布枝さんの故郷なの」。

岡山で新幹線から乗り換えてJR安来駅に着いた。駅前に、ゲゲゲの女房でラッピングしたコミュニティバスが停まっている。清水寺方面に行くらしい。子どもたちもいない2人だけの気楽な旅だ。乗せてもらう。

清水寺に着き、境内を歩き始める。茶店があった。名物という羊羹をご相伴いただいた茶とともに食べた。店の人に、三重塔に登れると聞く。急な階段を上った。県の重文とは言え、このような塔を上るのは初めてだ。視界が広がる。「ね、来て良かったでしょ」と妻。

布枝さんが生まれた大塚という町に移動する。「どこから来なさった」と声を掛けられる。それも何人にも。役名は忘れたけれど、松坂慶子さんを思い浮かべた。おせっかいが心地いい。

生家で布枝さんの姪御さんに屋内を案内していただいた。妻は「ほら、ここでお見合いしたのよ。あなたが座っている場所で、しげるさんがオナラをしたの」と楽しそうに話す。

布枝さん生家

大塚町の布枝さんの生家は
今もツアー客で賑わう

鷺の湯温泉の宿で歓待してもらった翌日、足立美術館の庭園に感嘆し、安来節演芸館でどじょうすくいを見て2人して笑った。酒蔵で地酒「月山」を試飲し、昔ながらに鋼を作る工房を見学した。その後、カフェロッソという店で世界第2位のバリスタが煎れてくれたカプチーノで寛いだ。真向かいに座る妻。2人きりでコーヒーを店で飲むなんていつ以来だろう。

安来市が「ちょっこしレター」という夫婦の手紙コンテストを始めたらしい。田んぼでエサをついばむ白鳥を見ながら満面の笑顔を浮かべる妻を見て、応募しようかと思う。「ありがとう」という言葉を添えて―。

安来の夫婦の旅の問い合わせは安来市観光協会へ。電話0854―23―7667。

安来観光の新拠点も登場 道の駅「あらエッサ」

島根県安来市に4月26日、道の駅「あらエッサ」がオープンした。古民家風レストランでの地元食材を使った食事や、地元で人気のフルーツ牛乳を使ったソフトクリームが味わえるほか特産品や農産物の販売コーナーも設置。観光情報コーナーでは安来節や安来弁も聞ける。

同市中海町の国道9号線沿いに立地。山陰道・安来ICや米子空港、JR安来駅ともほど近く、安来の新しい観光拠点として期待される。

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