艶やか雛が告げる日本の春(2) 和歌山加太「雛流し」
女性の願い雛に込め
女性のための行事、雛祭り。この日を「女性のための神様」として全国から信仰を集める地、和歌山市加太の淡嶋神社で迎えるというのは実に神秘的で、込められた気持ちの深さが伝わる。
毎年3月3日に行われる「雛流し」は、女性の願いを込めた雛人形を舟で海へ流すという伝統の神事。当日は例年、全国から多くの女性が集う。
雛祭りと同神社の関係は深い。御祭神で薬の神様とされる少彦名命(すくなひこなのみこと)と神功皇后の男女一対の御神像が男雛女雛の始まりで、雛祭りの日程、語源もこれに関係するとされる。紀州徳川家は代々、姫の初節句の際に雛人形の奉納を続けてきた歴史もあり、現代になっても全国から雛人形が寄せられることからも全国的な信仰の厚さがわかる。
「雛流し」は正午に始まる。全国から奉納され、願いごとが書かれた雛人形を本殿でお祓いした後、白木の舟に乗せて雛祭りの歌とともに海へ送り出すことで供養する。雛人形には女性の成長と幸せへの願いが込められ、参加した女性たちは幼いころから親しんだ雛人形が白波の間を進んでいく様子をじっと眺め、感謝と願いを祈る。
同神社は特に女性の病気回復や安産・子授けなど女性の願いにご利益があるとされる。さらに地元・加太は万葉の時代に歌に詠まれた景勝地であり、眼前の海がつくる風光明媚な景観、夕陽が美しい。加太は和歌山県での「女子旅」にうってつけのスポットなのだ。
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