誰もが旅する山陰 ツアー、宿、交通の代表者でユニバーサルツーリズム鼎談(1)
島根県で障害者や高齢者、人的な介助サポートが必要な人たちが旅行できる態勢を整えようとする動きが活発化している。障害者や高齢者の旅行相談に対応するプロジェクトゆうあい、10年前からバリアフリーとユニバーサルツーリズムに根差した宿づくりを進めるなにわ一水、今年4月にリフト付きの観光バスを導入した東出雲観光の代表にお集まりいただき、現状とこれからを聞いた。
ユニバーサル推進に価値 プロジェクトゆうあい代表・川瀬篤志さん
―まず仕事の内容から教えてください。
川瀬 プロジェクトゆうあいは2004年に法人登録を行い、主に障害のある方の地域生活の支援や仕事づくりを行っています。09年からは松江・山陰バリアフリーツアーセンターをつくり、障害者や高齢者の旅行の相談窓口として開設しました。リフト付きバスの乗降体験モニターツアーのほか、旅行に行く際の不安を取り除くアドバイスなど、1本の窓口で対応できるワンストップサービスが主な業務です。
年間で問い合わせを含めて100件ほど対応しています。他地域に行かれる際の情報は各地の日本バリアフリー観光推進機構と連携し、サポートしています。島根県内、松江、出雲、鳥取県の境港などが主な業務の範ちゅうになります。
―勝谷さんのところはいかがですか。
勝谷 10年以上前からバリアフリー、ユニバーサルツーリズムに取り組んできました。当初は段差をなくしたり、間口を広げたりすればいいという気軽な感じで始めました。実際始めてみると障害のある方はもちろんですが、それ以上に高齢化に伴う身体の不自由なお客様から好評をいただくようになりました。
想定していなかったことでわかったのは、段差をなくすことで従業員にとって働きやすい環境になったということです。労働生産性がアップしたのです。バリアフリーはお客様に喜んでいただくだけでなく、従業員も働きやすくなる効果があることが実証されたわけです。それ以降、積極的にバリアフリー化、ユニバーサルデザイン化を進めるようになりました。
取り組み当初の際にプロジェクトゆうあいと知り合ってから、バリアフリーやユニバサールツアーなどに特化したツアーセンターの存在を知り、それ以降いろいろな相談に乗っていただくようになりました。16年にはバリアフリーユニバーサルデザイン推進功労者表彰内閣府特命大臣表彰優良賞を受賞しました。
松江モデルを構築する 東出雲観光社長・森山雄宇さん
―森山さんは今年、リフト付きの貸切バスを導入されましたね。
森山 タクシー会社の営業もしており、15年にユニバーサルデザインタクシーを入れました。3年ほど前に、ある講演会でユニバーサルデザイン観光という話を聞き、タクシーだけでなく貸切バスも他社と差別化を図らなければいけないと感じ導入を決めました。
当社の理念に「地域に密着しニーズに対応できる、総合的な観光産業関連会社を目指す」と掲げているように、地域への貢献が大目的にあります。障害だけでなく人的な介助サービスが必要なお客様は地域に大勢いらっしゃいます。そういった人たちに楽しく旅行に行っていただくには、リフト付きの貸切バスがあればと思いました。
今年4月に視覚障害者や聴覚障害者、車いす利用者の方々と日帰りでバリアフリー研修を行いました。その際に20年ぶりにバス旅行をしたというお客様もおられ、この取り組みはユニバーサルツーリズムの需要喚起になると実感しました。お客様のためにできることはなんでもやっていこうと思う社員さんが多いので、前向きに取り組んでいきたいですね。
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