鉄の道を歩く-鉄の文化館めぐり(1) 安来市・雲南市
安来市、奥出雲町、雲南市は、いにしえから続く「たたら製鉄」という独自の地域文化を語り継ごうと「鉄の道文化圏」を形成している。日本遺産認定もその取り組みの1つの成果だが、1987年にスタートした文化圏プロジェクトの核は、鉄の文化を伝え未来へとつなぐための鉄の文化館の設置。ひと口に「たたら」といってもなかなか伝わりにくいが、平成の大合併以前の旧6市町村に点在する各館をめぐるのが、地域の物語への理解を深める近道となる。
和鋼博物館/安来市
たたら製鉄の世界への入口は、安来市の和鋼博物館。たたらの歴史から生産技術、流通にいたるまでを資料展示や映像、体験を通して多角的に伝える、日本で唯一のたたら製鉄の総合博物館だ。
博物館目前は、鉄の積出港だった安来港。もともとは同市で操業している日立金属が企業ミュージアムとして開設したもので、国の重要有形民俗文化財に指定されている「たたらによる和鋼生産用具」や、足踏み式の送風装置「天秤ふいご」など歴史的な資料が多い。たたら操業時に使用していた道具のほか、たたら製鉄の粋を集めた日本刀など貴重なものも並ぶ。企画展や講演会なども開かれる。5カ国語の解説文もある。
開館は9―17時、水曜休み。入館料は一般300円、団体250円。
金屋子神話民俗館/安来市
安来市広瀬町には、鉄の守護神「金屋子神」をまつる金屋子神社がある。金屋子神話民俗館は神社に隣接。金屋子神にまつわる神話やたたらについての民話を5つのコーナーで紹介している。金屋子神をテーマに、原始から現在までの地域の人々がどのように暮らしを営み、風土を形成してきたか。歴史だけでなく民俗まで、たたらにまつわるストーリーの一端を伝える。江戸時代に、金屋子神社へ寄進した人たちの分布図が掲示されており、たたら製鉄が中国地方全域に広がっていたことがわかり興味深い。
開館時間、入館料は基本的に和鋼博物館と同じ。
鉄の未来科学館/雲南市
たたら師たちの仕事場兼住居「菅谷たたら山内」が残る雲南市では、まず鉄の歴史村と呼ばれる吉田町の鉄の未来科学館で製鉄そのものを学ぼう。古代からの製鉄炉の構造の変遷から、製鉄産業の歴史を紹介、現代の最新技術にも触れることで鉄文化の可能性と未来について考察を深められる。
イギリスで盛んだった木炭製鉄業からコークスの利用へと至る産業革命にまつわる技術の変遷など展示の幅は世界に広がる。洋式高炉の大型模型のほか、菅谷たたら製鉄炉の地下構造も紹介している。
同一エリア内には和鋼生産研究開発施設やたたら鍛冶工房があり、同工房では刃物づくりや「小だたら」操業などの体験もできる。
同館の開館は9―17時、月曜休み。入館料は大人510円、団体410円。
古代鉄歌謡館/雲南市
雲南市大東町の古代鉄歌謡館のテーマは「神話と鉄」。神話の地・出雲に根付く神楽や、地元ゆかりの神話・大蛇の演劇を公演する劇場と、オーディトリアムやビデオテープを使った多彩な映像表現で「鉄にかかわる歌謡」などを紹介する演劇博物館を有する。
神楽面がずらりと並ぶ展示や、鉄の道の紹介もあり、この2つの地域文化を通して、地元の民俗・風土を伝えている。
開館は9―17時、火曜休み。入館料は大人210円。
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