山鹿コラム ちびっこギャングに会いに
町ぐるみで子どもたち育てる風土
念願のさくら湯に行ってきた。入口をくぐると「いらっしゃい!」と笑顔で迎えてくれたおばさまたちが3名、てきぱきとお客さんをさばいている。地元の方も多く来るため、顔見知りなのだろう。世間話をしながら、お客さんをお風呂に送り出す。
とろとろのお湯に浸かって幸せ気分で出ると「どげんやった?気持ちよかったですか?」と声を掛けてくれた。すると、一人のおばさまが「おっギャングがきたぞ!ギャングが!」とその言葉と裏腹にニコニコしながら嬉しそうに入口を見ているではないか?
私も入口に目をやるとやんちゃざかりの小学生の子どもたちが4、5人。「こんばんは!」と元気よくあいさつをしながら入ってきた。おばさまたちはとてもうれしそうに子どもたち一人ひとりに声をかけていく。
なるほど、かわいいちびっこギャングである。そう思ったのも束の間。おばさまの一人が「こら!なんしよっと!そげんことしたらいかん!」と一人の男の子を叱ったのだ。多分、ふざけて何か投げて渡したのだろう。「さあ、こぎゃんして渡さんな」と教えている。するとその子も「ごめんなさい」と素直に渡し直していた。
私は目の前で起きていることに驚いた。このご時世によその子を叱るなんて! その時、昼間お会いした、さくら湯の温泉施設管理係の朝倉秀彦さんの言葉を思い出した。
「夏休み、冬休みは朝6時から8時まで子どもたちがさくら湯に無料で入れます。そこで銭湯の正しい入り方を教えています。山鹿の歴史やさくら湯の成り立ちなども教えています。きちんと知ることで良いこと良くないことが感じることができるからです。この町の人たちは町のために何ができるかを考えているんですよ」。
そうなんだ。ここでは、町ぐるみで子どもたちを育てているんだ。わが子のように思えるからこそ叱れるんだ。なんだかとても心地良い気分になった。
人のつながりが希薄化する中、ぬくもりのある町づくりがここにある。山鹿の素敵な人たちとちびっこギャングに会いに行きませんか。
(九観連広島事務所 矢島麻衣子)
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