自然を歩く 米子大瀑布・幽谷の美と迫力に驚嘆
静寂に満ちた渓谷に流れ落ちる二条の滝、米子(よなこ)大瀑布。須坂が誇る"秘境"は、深山幽谷の世界に絶対的な存在感を放つ。大自然であるがゆえの美を求めて、未知を歩く―。
須坂市街地から国道406号線を南下、林道へ進み、駐車場から遊歩道へ。約800メートルの道程を30分かけて大瀑布を目指すが、渓谷美を楽しみながら登ると上りもそれほど苦ではない。日本三大不動尊の1つ、米子不動尊奥の院まで登ると右手に不動滝、左手に権現滝が見えてきた。先に大瀑布見学を終えた初老のハイカーが一休みしていた。「疲れたけど気持ちがいいねえ」。その声を聞いて、さらに歩みを進める。
水量が多く直線的な権現滝は「男滝」、水量が少なく霧状の不動滝は「女滝」。日本有数の夫婦滝が、日本の滝百選のひとつ・米子大瀑布の姿だ。
少し登り、不動滝の間近まで。岩肌にたたきつける滝の音は轟音だが、「女滝」だからかそれほど厳しさを感じない。それよりも、柱状節理の崖から流れ落ちる滝が作り上げる、天女の羽衣と称されるほどの扇状の水しぶきが美しく、迫力と荘厳さに圧倒された。しぶきは全身に浴びせかけられ、それがまた心地いい。マイナスイオンを体感したということだろうか。修験者が「みそぎ」に訪れる姿が今でも見られ、この日も目の前で修業に励んでいる修験者がいた。あらためて霊験あらたかな大自然の驚異に息をのむ。
権現滝は間近までは行けないが、展望スポットから眺められる。こちらは離れていても激しい轟音を響かせる。直線的な滝が谷に落下していく姿は壮観。
遊歩道に戻り、歩みを進めると、米子鉱山跡地などから俯瞰で夫婦滝が仲良く並ぶ姿が目に飛び込む。スポットによって表情を変え、いずれも絶景。自然の神秘に時を忘れて見入り、登山の疲れも吹き飛ぶだろう。
上杉謙信所用の軍配に歴史ロマン
麓へ降りると、米子瀧山不動寺がある。上杉謙信ゆかりの寺で、謙信の護持仏だった不動明王を本尊とする古刹だ。
近年、軍神・毘沙門天が描かれた謙信所用の実戦用の軍配が見つかり、歴史学的観点からも注目を集めている。平成8年の改修の際、不動明王の台座を動かせると木箱が出てきて、真綿に包まれた軍配が現れたという。同寺の竹前敬史副住職は「本当に驚きました。寺と謙信公のつながりを考えるとここに安置したのもうなづけます」。保存状態が良く、当時のままと思われる鮮やかさで、謙信が生きた時代の一端が目の前に広がる。
軍配は通常非公開だが、電話で相談に応じる(電話026―245―0972)。「秘仏毘沙門天王」は7年に1度公開する。