まちを歩く 須坂市・製糸業で栄えた町並み
10/10/10
須坂市は明治から昭和期にかけて製糸業で栄え、現在のまちの土台を築き上げた。市中心部には今も土蔵造りの建物や商家など「蔵の町並み」が残り、市のシンボルとして、生活の舞台として現代の世にたたずんでいる。当時の繁栄の面影を色濃く残す、白壁の映えるまちを歩いてみよう。
「蔵の町並み」を歩くと、そこかしこに軒を連ねる豪壮な土蔵や大壁造りの商家、町屋が。大鬼瓦や大屋根、蛇腹仕上げの軒裏、乳鍵など当時の威容と知恵を感じさせる造りは、まちの一風景にとどまらない存在感を放つ。もちろん今も営業中の商店も多いが、蔵を再利用した施設も点在。受け継いできた伝統を現代に伝えている。
「須坂クラシック美術館」は、製糸業や銀行業で富を成した牧新七が明治初期に建てた屋敷を活用。明治―昭和期、政財界の有力者が集った屋敷は広い間取りや意匠に贅沢の粋を凝らしている。学芸員の麻沼育美さんは「当時としてはかなりの広さで、意匠も豪華です。隠れたところに贅沢を感じさせるこだわりがあるので探してみてください」と話す。日本画家・岡信孝氏の古美術コレクションを展示しており、屋敷観賞とあわせて楽しみたい。
機織り体験ができる「ふれあい館まゆぐら」と、観光案内所「蔵のまち観光交流センター」は、いずれもまゆ蔵を改築。散策の休憩にも気軽に立ち寄れる施設だ。
建物は近代に建てられたものだが、「笠鉾会館ドリームホール」では、毎夏開かれる須坂伝統の祭典・祇園祭で練り歩く笠鉾11基と、現存する祭屋台4台を展示している。「須坂の風土と町屋の人々の心意気に触れられます」と学芸員の八百屋国臣さん。
歴史遺産として、観光資源として、生活の場として、まち全体が存在感を保ち続ける蔵の町並み。須坂の過去と現在を体感できるゾーンとなっている。