懐が深い北近畿観光
海も山も独り占め 丹後・丹波・但馬・若狭路
訪日客が急増し、「観光大国」へと突き進む日本。その勢いを地方へと波及させようという流れが加速する中、期待を集めるのが近畿だ。古都京都や複数の世界遺産を有する歴史的価値と京阪神の都市文化といった魅力が注目されているからだが、これらを南近畿と表現するなら、海山の魅力溢れる豊かな自然を持つ 北近畿の存在こそが近畿観光の懐をより深いものにしている。
ひと口に北近畿と言ってもその範囲は広大で、地域によってその魅力は大きく異なる。北近畿は大きく分けて、京都府北部の丹後、京都府と兵庫県にまたがる丹波、兵庫県北部の但馬、さらに丹後・丹波と隣接する福井県若狭路を加えた4エリアで構成。世界認定の山陰海岸ジオパークをはじめ雄大な自然の上に成り立ち、そこには歴史とともに人々が紡いできた地域固有の文化が息づく。その魅力の多様性は観光戦国時代ともいえる昨今においては、さながら群雄割拠の様相を呈している。
丹後は、地域を代表するシンボルの日本三景・天橋立をはじめ海の風光明媚な景観が広がる「海の京都」だ。今年は夏から秋にかけて「海の京都博」を開催。伊根の舟屋や軍港都市・舞鶴など各市町をめぐって海と生きる地域の暮らしを感じたい。
一方で丹波は山間地。田園と山々による里山風情が「日本の原風景」を伝えてくれる。福知山・綾部は「海の京都」の一部として、丹波・篠山は秋の紅葉の名所として近畿随一の存在感を放つ。北東に抜けて海の風情に包まれた若狭路との対比を楽しむ旅もいい。
スケールの大きさなら但馬。海岸線を走れば奇岩・絶壁に驚嘆し、山間部を歩けば竹田城跡をはじめ歴史風情に心を癒す。城崎、湯村の二大温泉地を擁する宿泊拠点でもあり、冬の雪景色が季節の妙を伝える。「日本の心」を求めての旅はここで決まりだ。
海、山、文化とくれば食がうまいのは必然。夏は白イカ、秋は丹波で丹波黒豆や丹波栗、冬はぼたん鍋が美味しい。山陰・丹後では松葉ガニが登場する。郷土の味を求めて、北近畿の旅人は満腹感に満たされながら大満足の旅をする。
自然、歴史、食、そして季節感。暮らしを構成する文化すべてに、外国人、日本人ともに求める「Japanese」がここにはある。日帰り、1泊ではもったいない。滞在して海も山も独り占め、北近畿だけの欲張り旅に出かけたい。
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