瀬戸内海軸に観光戦略 松山市の挑戦(1) 瀬戸内海道1号線や商品造成
2年後の2014年は瀬戸内海が国立公園指定80周年、道後温泉本館建設120周年、四国八十八カ所霊場開創1200年を迎える。これを機にどのような観光戦略を持っているのか、松山市観光産業振興課専門監で特命課長の織田祐吾さんに聞いた。
瀬戸内海から新しい旅を発信
全国に目を向けますと、九州新幹線を活用した商品の多様化、東京スカイツリー開業や東京駅のリニューアルオープンに伴う首都圏特需、来年には、伊勢や出雲で式年遷宮が行われ、さらに2年後には北陸新幹線の開業が予定されるなかで四国には今後3年間、これといった大きな話題もなく、観光情勢は厳しい局面を迎えます。
今後、四国への誘客を拡大するには、危機意識を共有しながら中長期的かつ広域的な視点で観光戦略を明確にし、具体策を打ち出し旅行市場から注目を集めることが重要です。
着目したのは瀬戸内海です。古くから国内外から資源価値を認められ、特に広島と松山・愛媛を結ぶエリアは風光明媚な風景、そこで育まれた歴史、文化、産業などがあり多様な資源の宝庫です。周囲には世界遺産「厳島神社」、軍港の面影を残す「呉」、日本最古の名湯「道後温泉」など日本を代表する観光スポットがあり、国内外の多くの観光客から高い評価を得ています。
松山市では新たな観光戦略として「瀬戸内・松山」構想を掲げ、瀬戸内海の魅力を引き出し物語を演出しながら、海を軸に山陽と松山・四国の資源を組み合わせ、西日本に新たなスタイルの旅を創出し、エリア全体への新規観光客の獲得を目指しています。
具体的には松山、呉、広島、宮島を結ぶルートを「瀬戸内海道1号線」と命名し「瀬戸内はいくるーず」など高速船やフェリーを活用した海上ルートの商品開発を行ってきました。さらに新幹線・特急列車に、船や二次アクセス、6つの人気観光施設の入場券がセットになった「瀬戸内・松山ぐるりんパス」が誕生し、大手旅行会社では、このルートを組み込んだ新たな旅行商品パンフレットが次々に造成されてきました。なかでも、今年の4月から6月までの3カ月にわたりJR四国、JR西日本と共催して実施した重点送客キャンペーン「瀬戸内・松山キャンペーン」は期間中の効果のみならず、今後の展開へ向けて意義のあるものでした。
「瀬戸内はいくるーず」は宮島・広島間の航路と、広島・松山間の航路をパッケージ化し、呉にも途中下船できる格安の商品で、宮島・松山間が最速98分、広島・松山間は最速68分で、瀬戸内海の魅力を感じながら移動できることも評価をいただいています。
またエスコート型企画としてフェリーを活用したバスプランは、バス1台に何人乗車した場合でも搬送運賃が均一価格という新たな商品で驚きの価格になっています。
加えて、呉・松山間のフェリーの船上でボランティアガイドによる案内も実現しました。呉、松山という広域にまたがるボランティアガイドが合同で研修会や実地研修を開き、商品の域にまで発展した例は全国的に見てもおそらく初めてのケースではないでしょうか。
しかしながら、まだこのルートは旅行市場における認知度が低く、広島・松山間で1日23往復も航路が就航していることさえ知られていない状態で、定着には時間を要するでしょう。
2年後には、瀬戸内海が日本で初めて国立公園に指定されて80周年という節目の年を迎えます。まずはこのタイミングを目指し、瀬戸大橋やしまなみ海道、さらには、周防大島からの海上ルートなどとも組み合わせた瀬戸内・松山シーループを実現させたいですね。将来的には「立山・黒部アルペンルート」のように定番の人気商品として定着し、インバウンド政策にも貢献できればと思っています。
幸い、この構想の実現へ向けて四国側のJR四国や石崎汽船に加え、対岸の広島市、呉市、廿日市市、JR西日本、瀬戸内海汽船にも加わっていただき、行政と交通キャリアが一体となった「瀬戸内・松山ツーリズム推進会議」が設立され、また、この組織が進めようとする事業が国の事業認定を受けました。一地域から端を発した取り組みが、このように広域かつ官民一体となった取り組みに発展し、いわば国策として評価を受けたことは心強く、今後、この推進体制を中核として、様々な企画を提案していきたいと思います。
メモリアルイヤーには、松山・広島の両商工会議所とも連携しながら、「瀬戸内海のクルーズ商品」を磨き、また愛媛県と広島県が準備を進めている「瀬戸内しま博覧会」に絡めて、島しょ部ならではの滞在メニューの開発にも挑戦したいですね。
四国愛媛 旅のおすすめサイト
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