山鹿コラム 灯籠に感じる山鹿の矜持
伝統受け継ぐ強い思い
山鹿市に入った途端に目に飛び込んでくる数々の灯籠。街灯や車止めは灯籠が形取られ、ポストや電話ボックスの上には灯籠が付いており、足元を見るとマンホールにも灯籠が描かれています。
山鹿灯籠は和紙と糊だけで作られる伝統工芸品であり、どの作品も精巧で紙と糊でできているとは思えないほどの重厚感が伝わってきてきます。
また百年以上の歴史を持つ芝居小屋「八千代座」で鑑賞できる山鹿灯籠踊りは、金灯籠を頭に掲げた女性が踊る姿がとても幻想的です。歴史深い八千代座で見ることは、山鹿でしか味わえない特別な時間を感じました。
また山鹿といえば「さくら湯」の存在を抜きにして語ることはできません。山鹿温泉の元湯で、山鹿市民のまちづくりに対する強い思いで平成24年に再現されました。
源泉かけ流しで柔らかく、とろみのある泉質はまるで美容液に入っているようです。江戸期の建築様式を残すレトロな造りと地元の方々の方言を聞いて湯に浸かっていると、まるでタイムスリップした気分になりました。
さくら湯の復興の話で驚いたことがあります。復興するのは決まったものの設計図がなかったのだそうです。そこで設計図代わりになったのが伝統工芸品である山鹿灯籠です。
現在もさくら湯の2階に展示してある山鹿灯籠として作られたさくら湯の模型は、解体前に伝統工芸作家が柱の角寸のディテールから瓦の枚数まで本物と同じように完璧な精度で再現。30分の1のスケールですが、建物の中を覗き込むと本物と一緒だということがわかります。伝統で伝統を再現した素晴らしさと歴史の奥深さを感じました。
こういった温泉地の歴史と文化を引き継ごうと山鹿市では小学校の行事の一環として、小学生がさくら湯の貴賓湯「龍の湯」に入るようにしています。
山鹿灯籠民芸館や八千代座、さくら湯は、山鹿散策の中心となる豊前街道にあります。豊前街道には歴史的な建物が多く並んでいます。歩いてみると地元の人たちの努力と思いによって保存・再現し、引き継がれてきた伝統や文化に触れることができます。
温泉地としての歴史があり、風情豊かな山鹿にぜひ足を運んでいただきたいと思います。
(九観連東京事務所 唐津遵子)