城下町連なる丹波・若狭 歴史街道を行く
丹波と若狭の町々は室町から江戸期、城下町として発展した。現代にあっても町並みや史跡にその名残を色濃くとどめ、歴史とともに培ってきた地域の風土を感じさせる。丹波―若狭の”歴史街道”を訪ね歩き、現代に溶け込む往時の空気感を感じたい。
篠山城跡と商家群
大阪・神戸からJRや舞鶴若狭道で北へ向かうと南の玄関口、篠山市。雄大な石垣が残る篠山城跡を中心に、城下町の町並みが広がっている。城跡に立つ大書院は近年復元されたもので、京都・二条城二の丸御殿と同規模の第一級建築物。格式高い造りは、往時の威容を伝えている。
城跡からは、西に武家屋敷安間家史料館をはじめとする武家屋敷群、北に旧篠山町役場を活用した観光拠点施設「大正ロマン館」など史跡・施設が点在。東に行けば、江戸―明治期の白壁造りの商家が連なる「河原町妻入商家群」が約600メートル続き、まるでタイムスリップしたよう。周辺の商店や食事処で買い物や食べ歩きもまち歩きの楽しみを増幅させるだろう。
柏原と「春日局」興禅寺
丹波市は大河ドラマとつながりが深い。柏原地域は江戸時代、丹波柏原藩として「江」のヒロイン、浅井三姉妹の叔父、織田信包が初代藩主を務めた。当時の遺構が多く残り、なかでも藩陣屋跡は堂々とした長屋門や書院が織田家の公邸としての威容をしのばせる。町内には太鼓やぐらや木の根橋もあり、歴史の風情に溢れている。
春日地域は徳川三代将軍・家光の乳母「春日局」生誕の地。山城として評価の高い黒井城跡麓に、彼女が生まれた黒井城下館跡の興禅寺がある。高い石垣と白塀が水をたたえた濠に映える豪壮なたたずまいは必見だ。
明智光秀が築いた福知山城
福知山市は、このエリア唯一の天守閣を有する福知山城が存在感を放つ。復元された3層4階の天守閣は内部が郷土資料館として市の歴史を伝え、市内を一望できる望楼からの眺めは壮観。春は桜、冬は雪景色と季節に応じて、まちのシンボルの名に違わぬ景観を見せてくれる。
築城したのは明智光秀で、同時にまちの基礎を築き上げた。まちの東側を流れる由良川の治水対策として造成した「明智薮」や、古い町並みが残る城下町の一角には光秀をまつった御霊神社など、名君・光秀のつくった城下町散策はJR福知山駅からぶらりといこう。
足利尊氏生誕の地・安国寺
綾部市では、市中心部の一角に残る白壁の商家が町人町の風情を漂わせるが、ここで紹介したいのは安国寺。室町幕府を開いた足利尊氏の生誕地といわれ、産屋の跡や産湯の井戸から尊氏の墓まで尊氏の魂が眠る古刹だ。国の重要文化財である本尊・釈迦三尊坐像など貴重な所蔵のほか、素朴なたたずまいの茅葺きの本殿など由緒と癒しを感じさせる。
「江」ゆかりの小浜城址
小浜市は、大河ドラマ「江」放映で注目が集まる。三姉妹の次女、初が夫の京極高次と連れ添って暮らしたこの地には、のちに常高院と名を変えた初にまつわる史跡が。高次の菩提寺として建立した常高寺は小高い山に建てられた名刹で、常高院もここに眠る。常高院の肖像画(複製)や自筆の消息など貴重な品を所蔵しており、物語を深く知る旅には欠かせない。
高次が着工、酒井氏へと引き継がれ完成した小浜城址は石垣を残すのみだが、小浜藩城下町は今も当時の香りを強く残す。なかでも三丁町は、京都・祇園を思わせる当時の歓楽街。料亭や茶屋だった家屋がそのまま残り、今も生活に使われている。風流で艶っぽい、自然体の姿はまちが刻んできた歴史そのもの。その魅力に思わずひき込まれてしまうだろう。