自由気ままに旅を自己演出 その名は”フェリークルーズ”
流れゆく瀬戸内海―夜景も魅力のひとつ
夕方17時―18時台に関西(または九州)を出て翌朝には九州(または関西)へ到着という気軽な船旅を楽しめるのは関西―九州航路しかないように思える。
しかも、一部は太平洋を運航する船があるにせよ、ほとんどが瀬戸内海という穏やかな海を航海するため、船旅につきものの「揺れ」がほとんどない。昼行便でないため、瀬戸内海のすばらしい景観を見ることはできないが、明石海峡大橋や瀬戸大橋の夜景は十分楽しめる。これもこの航路の魅力であるに違いない。
関西の人にとって、フェリーは2等室の雑魚寝のイメージが強く、船旅を楽しむというよりは移動の手段という思いが強いだろう。
しかし、最近のフェリーの特等室はホテル並みの設備で、1等室や2等寝台でもプライベートな空間づくりを重視し、ゆったりとした船旅を楽しむことができるようになった。
食事の内容についてもずいぶん改善された。様々なメニューが用意され、自分自身で好みの食べ物を選べるのもいい。料金も高くない。そして何よりも大浴場を完備しているのがうれしい。
豪華客船のような人的なサービスとまではいかないにせよ、フェリーには自身で船旅をコーディネートできる自由さがある。この気ままさを楽しめる船旅を「フェリークルーズ」と呼びたい。
豪華客船のサービスと比較して「あれがない」「これがない」と言っても仕方がない。自分でフェリークルーズの魅力を探し、自己演出する。そのための材料を今のフェリーは十分備えている。
どちらかといえば、フェリーを使ったツアーは船会社関連の旅行会社による企画募集ものなど限定されたツアーが多いようだ。
インターネットなどによる宿泊施設の直販売、航空会社や鉄道会社の手数料削減といった環境下で、旅行会社の収益面においてもフェリーを使った船旅をもう少し見直してもいいのではないか。今こそ関西―九州のフェリー航路と九州の観光素材、宿泊地をセットにしたツアー造成を望みたい。