出会いの長崎(1) 雲仙で地球を体感する
昨年、新幹線全通効果に湧いた九州は南北=縦のラインが注目を浴びたが、今年は東西=横のラインにも目を向けてみたい。その西端、長崎県は江戸―明治期のキリシタン文化、日本開国の舞台となった異国情緒を中心に多彩な観光の魅力が揃う。なかでも今回は、エリアでは世界ジオパークに認定されている島原半島・雲仙、県全域では県が「王国」を標ぼうする食にスポットを当てて長崎県の魅力に迫ってみよう。今年も九州ブームは続く―。
ジオパークを歩き温泉に浸かる
周囲を海に囲まれた島原半島は、2009年に世界ジオパークに加盟認定された"地形・地質の世界遺産"。その特徴は、雲仙火山による火山地形を中心とする特異で多様な地質・地形、自然環境に集約される。変化に富んだ景観や温泉など、地域そのものが "生きている地球"を体感させてくれるという貴重な存在だ。
島原半島ジオパークは雲仙市、島原市、南島原市におよぶエリアで、その中心となるのが雲仙。日本初の国立公園に指定された自然の宝庫だ。
ジオパークの核となる雲仙岳は、1990年から5年間続いた平成噴火が記憶に新しい普賢岳をはじめとする「三峰五岳」と呼ばれる8山の総称。一帯で最高峰の平成新山(標高1483メートル)は平成噴火で形成された"歴史の証人"だ。春は雲仙ツツジでピンク色に染まり、夏は緑、秋は紅葉と四季折々に姿を変える。野鳥や高山植物の宝庫でもあり、登山でその美しさに間近で触れ合うのもいいだろう。仁田峠―妙見岳間は「雲仙ロープウェイ」も運行されているので上手に活用したい。
また、雲仙火山は「温泉」という恵みも生み出した。エリア内には数々の温泉地が点在しており、雲仙市の雲仙温泉はその中核ともいえる存在。雲仙岳の南西端、矢岳と絹笠山の間に温泉街を形成し、湯けむり情緒を漂わせている。泉質は独特な匂いを持つ酸性硫黄泉で、旅館によって異なる透明、白濁の2種の色を持つ。殺菌や美肌に効果があるとして観光客の人気を集めている。
雲仙温泉の名物といえば「雲仙地獄」。温泉街に接するように並ぶ約30カ所の地熱地帯には、硫黄の匂いとともに地底から噴き上がる蒸気と熱気が立ち込める様子は「地獄」と形容するにふさわしいと感じさせる。「お糸地獄」「雀地獄」「清七地獄」など名称も特徴的で、近年もっとも活発に噴気を上げるのは「大叫喚地獄」。見た目も名称もそのインパクトはなかなかのものだ。
雲仙地獄では「ナイトツアー」も実施。清七地獄などライトアップされているスポットは少数で、大半はライトを片手に暗闇を進む。夜ならではの「地獄」が体感できる。
そのほか、もう活動しておらず、雲仙地獄が移動していることを示す「旧八幡地獄」や小さな火山「泥火山」、あちこちで見られる「湯の花」など地獄にはジオを感じられるスポットが点在。千々石断層が眺められる絹笠山や白雲の池なども絡めたジオスポットめぐりに温泉街から繰り出したい。
ジオを散策した後は、宿でゆっくりと温泉に浸かり身体の疲れを癒す―。まさにジオを目と肌、全身で体感するという濃密な旅がいながらにして体感できるのが、雲仙・島原の最大の魅力と言えるだろう。