やまなみサイクリング―島根飯南(2) 心つかんだ田園の美
著名なロードバイククラブの事務局を担う高橋正子さんは「国道から少し入ったら川のせせらぎが聞こえる。坂を上り切る、カーブを曲がる、その途端に美しい里山の風景がパッと広がる。一瞬で通り過ぎる車でも、歩いていてもこの感動は体験できない。自転車の特権です」と評した。
自転車だからこそ出会える一瞬の風景
サイクリング・コーディネーターの筬島洋敏さん夫妻は、試走中に子どもたちから「がんばってください」と声をかけられたこと、町の人たちと触れ合う機会が少なくなかったことを「自転車だから声をかけてもらえるし、声をかけられる。車ではコミュニケーションが生じない」と話し、飯南町の自転車観光の方向性を示唆した。
自転車専門誌の編集者だった金井恵理子さんは「しめなわ創作館は良かった。出雲大社を見てから行くと印象が異なるので、出雲大社を見て、しめ縄を作っているところを見てもらう。出雲大社は全国ブランド。それを生かさない手はない」とし、道の駅を拠点とする散歩感覚のサイクリングとともに、出雲大社と飯南町を結ぶなど広域サイクリングを提案した。
飯南町観光協会の難波孝憲さんは「自転車観光を定着させるためには、自分たちが自転車に親しみサイクリストを受け入れるまちだと示さないといけない。今回アドバイスを受けたことを積み重ね、まずは道の駅を拠点にレンタサイクル、お散歩サイクリングツアーをやっていきたい」。
飯南町の取り組みはまだ緒についたばかり。世界的なサイクリングコースに成長した「しまなみ海道」とつながる、里山ロングライドコース「やまなみ街道」の拠点としての可能性と、今回体験した時速8キロだからこそ出会える旅もある。どちらも町の観光プログラムとして実現可能性は高い。自転車だからこそ出会える一瞬の風景、まち中の点と点を結ぶ自転車だからこその機能。まちづくり観光の手段として自転車の有効性を認識した2日間だった。
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