上高地開山祭に行ってきた
4月27日午前5時半、昨年11月に開通した中央環状線山手トンネル内ICから首都高に乗った。上高地へのシャトルバス乗降の拠点となる沢渡(さわんど)に着いたのは、確か9時頃。走行距離220キロくらいだったか。
上高地は全日マイカー規制がされていて、ここでシャトルバスかタクシーに乗り換える。沢渡へは1週間前に梓湖大橋の竣工を取材するために来たばかり。2週連続だ。
長野県側のシャトルバスはアルピコグループが一手に運行し、アルピコグループのタクシーも多い。年間150万人が訪れる上高地への足を、ほぼ独占しているアルピコグループが産業再生法による事業再建を目指すなんて、なにをどうしたんだか。
新釡トンネルができたお陰で、名物だったトンネル内片側通行の長い信号待ちもなく、上高地のバスターミナルまで30分ほどで着いた。かなり近くなった感じがする。
「あれ、釡トンネルはもう通っちゃっただか」「さっきのがそうだべ」「早くなったなぇ」「でも、あれはあれで味があっただねぇか」。どこから来た人たちだったろう。車窓に大正池を見るころ、車内はこんな感じで盛り上がっていた。
上高地は、快晴とまでは言わないけど、かなりいい天気で、気持ちも弾んだ。正面に明神岳と穂高連峰、後ろに焼岳、それから梓川に河童橋。たぶん開山祭には10回以上、上高地にはもっと多く来ているから感動のようなものはないけど、気持ちの良さは変わらない。いつもと同じような場所から河童橋を写真に撮った。
河童橋たもとの開山祭会場には、馴染みの旅館経営者が幾人かいて、「晴れてよかったですね」「でも、シーズン全体ではどうなるか心配だよ」「そんな。喜べるときは喜んでおきましょうよ」。
確かに、この10年、周辺地域に自然災害や天候不順が多い。観光ビッグネーム、上高地といえども日帰り、宿泊人数とも減少傾向で、当事者の危機感は小さくない。
対岸のホテル白樺荘前でアルプホルンの演奏のリハーサルが始まろうとしていた。1人の奏者が梓川まで下りて、アルプホルンの先端部分で水をすくい、別のアルプホルンにも水を分けていた。乾燥を防ぐためだそうだ。
いつものことながら開山祭が始まる頃には、周辺は幾重もの人垣で、梓川の水で潤したアルプホルンの演奏も音だけが聞こえた。
開山祭が終わるといつものように明神地区まで歩いた。明神地区までは左岸を行くと40分、右岸なら1時間少しかかる。今、調べた。下流に向かって右側を右岸、左側を左岸と呼ぶそうだ。
ほぼ平坦な道の両脇にはかなり雪が残っていた。ところどころ水溜りが道幅全体を覆っている。ミュールの女性なんかもいて、楽しかったかは分からないけど、記憶に残る散策になっただろう。
それでも上高地に来たら歩くべきだ。明神池や大正池へ。梓川に沿って、森の中を。歩いてこその上高地だと思う。