今年も「麦とろウィーク」 全国の12温泉地で6月12-20日開催
温泉旅館で麦とろごはん-。6月12-20日の約1週間、全国12カ所の温泉で「麦とろごはんウィーク」が展開される。宿泊先の旅館で、朝食もしくは夕食に麦とろごはんを食べてもらおうというもので、食と健康への関心が高まるなか、宿泊客に喜ばれている。旅館ホテルにも好評で、参加温泉地は昨年より2カ所増え、北海道から九州まで全国の12カ所に。期間中、ざっと14万食の麦とろごはんが提供される。
健康志向にマッチし好評 はくばく全面支援
麦とろイベントは6月16日の「麦とろの日」(日本記念日協会認定)を挟んで、土曜日から翌週の日曜日まで9日間行われる。
2004年に長野県の渋温泉で始まり、その後05年に福島県の飯坂温泉、06年に石川県の山代温泉と長野県の白骨温泉、07年に北海道の登別温泉、山梨県の湯村温泉、福井県のあわら温泉、08年に宮崎県の青島温泉、09年に長崎県の雲仙温泉、山形県のかみのやま温泉、今年は山梨県の河口湖温泉と岐阜県の新穂高温泉郷が新たに加わり、全国12の温泉で「麦とろウィーク」イベントが行われる。
旅館組合単位で取り組む温泉が大半で、期間中は温泉地のすべての旅館もしくはほとんどの旅館で朝食か夕食に麦とろごはんが出される。
消費者の健康志向や健康食への関心の高まりから、麦とろごはんの評判はいい。最近は事前にホームページなどでイベントの告知や温泉と食での健康づくりをアピールしていることもあり、クレームがまったくないほど受け入れられている。
一方、温泉地にとってもGW後から夏休み前にかけて季節のイベントがしづらい時期に打てるイベントとして魅力があり、年々参加温泉地が増え続けている。
さらに、麦とろごはんウィークの発案者で、穀物メーカーの「はくばく」(山梨県南巨摩郡富士川町)が、イベントを100%支援していることも、イベントの定着を後押ししている。
大麦生産で国内7割のシェアを持つ同社が、麦とろ普及活動の一環としてイベントに取り組んでいることもあり、材料となる大麦と山芋は、イベントで使用する全食分無料で提供する。
食材の提供だけでなく、初参加の温泉地では、旅館経営者や料理長を対象に麦とろごはんの提供法やアレンジの仕方についての勉強会も開く。麦とろごはんという同一のメニューを提供しながらも、郷土料理との組み合わせや、各旅館で麦とろにトッピングできる一品を加えることで、旅行者の満足度を高めることに成功している。
旅行者にも地域にも受け入れられた麦とろごはんウィーク。イベントをきっかけに、1年を通じて麦とろを出し、健康旅館を打ち出す参加旅館も現れるなど、旅館の食の新たなバリエーションとしても期待される。
集客イベントとして期待 河口湖、新穂高が初参加
麦とろごはんイベントには、口蹄疫問題で地元観光業界が大きな打撃を受けている宮崎市の青島温泉も参加する。イベントには08年から参加、今年も旅館組合あげて取り組むことを決めている。
2年前に麦とろイベントを誘致した青島観光ホテルの高柳貴裕さんは「多くの宿泊キャンセルが発生するなか、今年のイベントには、来ていただいたお客様に対する感謝の気持ちをこめるつもりです」と話す。
口蹄疫発生が初めて報告された4月20日から5月末までに、市内のホテルだけでキャンセルは2万件に及ぶ。そうしたなかで取り組む意味を高柳さんは「キャンセルの嵐で、現状は、経営者も従業員もマイナス思考に陥りがちです。みんなが夢中でイベントに取り組むことで結束力を高め、元気をだしていきたいと思っています」と期待を込めて話している。
一方、麦とろごはんイベントに今年から参加する山梨県の河口湖温泉では5月28日、旅館経営者や料理長を対象にしたイベント説明会と試食会が開かれた。料理研究家で麦とろご当地メニューの開発にも取り組んでいる枝元なほみさんも参加し、おいしい麦とろごはんの提供の仕方などについて説明した。
同じく初参加の岐阜県の新穂高温泉郷では試食会が6月10日に行われる。
新穂高温泉の水波誠組合長は「健康食ブームでもあり、1人でも多くのお客様におこしいただきたいと期待しています。お客様には、温泉に入って、麦とろごはんを食べて元気になってもらう。私たちも元気におもてなしをしたいと思っています」と話す。
麦とろイベントの告知にも積極的で「新聞やテレビなどに、イベント情報発信についての協力を依頼しています。地元のFM局でも番組に出演しPRしてきました」と準備を整えている。
「麦とろごはん」とは?
近年、消費者の健康への関心の高まりは、食の嗜好にも変化をもたらした。ごはんといえば白米だけだった食生活から、玄米や雑穀類を健康増進の観点から主食に加える消費者が増えている。
こうした食への嗜好と温泉を組み合わせたのが麦とろごはんイベントだ。温泉と麦とろごはんで健康増進をアピールできる。
ビタミンBやミネラル、食物繊維が豊富に含まれる大麦と、胃腸の消化を助け栄養の吸収率をアップする長芋を組み合わせた麦とろごはん。通常メニューや売店の土産品としての展開も考えられる。