心ふるわす富山へ 立山黒部・五箇山・南砺
越中富山の魅力は、立山に代表される大自然と歴史文化。立山黒部アルペンルートでは秋にかけて黒部ダムをはじめ雄大で美しい自然が、世界遺産・五箇山では日本の原風景ともいえる山村の営みが、南砺市では地域に根付く「井波彫刻」の伝統の技が肌で感じられる。地域固有の魅力を間近で触れる旅の楽しみ。心をふるわせる奥深い素材が揃う富山へ足を運びたい。
大自然の魅力に息を呑む 立山黒部アルペンルート
春から秋にかけて大自然の魅力を堪能させてくれる立山黒部アルペンルートは、富山と信州大町を結び、立山を挟んで北西側と南東側で違った趣きを持つ。富山県から立山を越えて南東へ下ると、大観峰から黒部ダムをはじめ、立山黒部の雄大な景観が観光客を出迎える。
アルペンルート最高地点の室堂からトロリーバスで立山を越え大観峰へ。ここから黒部平までの立山ロープウェイでは、春夏は新緑、秋は紅葉と眼下一面に広がるパノラマの自然景観が楽しめる。黒部平では黒部平園地で黒部湖を眺め、高山植物観察園を訪れたい。
黒部ケーブルカーに乗り継ぎ、いよいよ黒部ダム・黒部湖へ向かう。日本最大のアーチ式ダムは高さ186メートルで、ダムそのものの雄大さに加え、展望台から眺める立山連峰から北アルプスの自然景観は思わず息を呑む迫力と美しさを持つ。
また、6月26日―10月15日は、観光放水が実施される。毎秒10―15トンの水量が豪快に放水され、轟音と舞い上がる水しぶきは大迫力。
黒部湖では、遊覧船「ガルべ」が6月1日―11月10日に運航。平均標位1448メートルで日本最高所の湖を、深緑の湖面や周囲の自然を眺めながら30分かけて周遊する。料金は930円。
黒部ダムからは関電トンネルトロリーバスで長野県側の玄関口・扇沢まで。エリア、季節ごとに景色が移り変わり、アルペンルートの自然の魅力は尽きることがない。
地域文化に触れる 五箇山合掌集落
富山県南西部、南砺市に位置する五箇山は、深い山峡の地に合掌造りの家屋が建ち並ぶ。岐阜県・白川郷と合わせて世界文化遺産にも登録されている伝統的な景観と文化は、日本の原風景を思い起こさせ、古きよき時代への郷愁を誘う。
合掌造り家屋は、旧平村の相倉集落に24棟、旧上平村の菅沼集落に9棟が現存。茅葺きの大きな三角屋根の家屋と周囲の水田や畑などが調和し、昔ながらの雪国の山村風景を今に伝えている。春から夏は緑、秋は紅葉、冬は雪景色と季節ごとに姿を変える自然とのコントラストも美しい。
相倉集落には相倉民俗館、菅沼集落には五箇山民俗館や塩硝の館など地域の文化に触れる資料館も。7月15―19日には相倉集落のライトアップを実施する。両集落の中間の上梨地区にある村上家では、約400年前に建てられた合掌造り家屋に民俗資料や和紙製造の用具などを展示している。
また、五箇山は「民謡の宝庫」と呼ばれるほど多くの民謡が受け継がれている。なかでも、平家の落人を歌った「麦屋節」、木片を編んだ楽器「ささら」を打ち鳴らす「こきりこ唄」は国の無形文化財に指定。そのほか、「五箇山追分節」や「といちんさ」など多くの民謡が根付き、地域の文化を歌と踊りで伝承し続けている。
創作体験も可能 南砺・井波彫刻
富山県南砺市井波地区には、約220年の歴史を持つ伝統工芸「井波彫刻」が根付く。欄間彫刻や天神様の置物などを中心に日本各地の寺院や家屋で見られるが、本場のこの地で伝承の匠の技術と木彫りの里の風土に触れてみてはどうだろう。
井波彫刻はケヤキやクスを材料に、「透かし深彫り」という技術を駆使した精巧で趣きある作風が特徴。北陸最大といわれる木造建造物の本堂を持つ井波別院瑞泉寺を江戸時代に再建したことを起源とし、同寺には井波の木彫り細工の粋が施されている。
道の駅井波「いなみ木彫りの里創遊館」は、井波彫刻の魅力を体感できる観光施設。井波彫刻工匠の指導で木彫り彫刻やクラフトなどを創作できる「くりえーと工房」や、若手工匠の仕事風景を見学できる「匠工房」など体験メニューが充実している。
併設する井波彫刻総合会館には、欄間や衝立をはじめ獅子頭、天神様など彫刻品を約200点展示、販売。瑞泉寺の伽藍配置をモデルに設計されており、井波彫刻の伝統技術の粋を堪能できる。
また、井波地区は瑞泉寺を中心に発展した門前町で、八日町通りには古い町並みが今も残る。南砺市観光連盟が設定しているまち歩きコース「南砺里山発見伝」の1つ「井波彫刻」コースを活用して、歴史の香り漂うまちを楽しみたい。