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名水を求めて 長野・岡山・富山

10/03/31

春から夏にかけて暖かさを増してくると、山々の雪解け水が麓の里に流れ出す。その湧水は、地域の人々はもちろん人間の営みに豊かな恵みをもたらしてくれる。特に夏場は、天然の冷たい水が渇いたのどにしみわたり、美味しさは格別。自然、まちを歩き楽しむ旅人に喜びを与えてくれるだろう。今回は、長野県大町市、富山県上市町、岡山県真庭市に湧き出す名水を取り上げる。人間の原点に立ち返り、水を求め歩く旅も楽しい。

女清水・男清水の伝説 長野県大町市

長野県大町市は、北アルプスの麓に位置し、その山々から流れ出る豊富な湧水に恵まれた「水のまち」。春から夏へと暖かくなるにつれ、雪解け水が川へ流れ、夏でも冷たく透き通った水がのどを潤してくれる。

そんな大町には水にまつわる伝説がある。その昔、まちの東を流れる女清水を飲む東側には女の子、西を流れる男清水を飲む西側は男の子ばかりが生まれたことに困った村人が、村の中心に両清水を流す川を作り、美味しくなった水を飲み、皆が幸せに暮らしたという言い伝えだ。

今も東側では女清水である居谷里湿原・水源地の水を、西側では男清水である北アルプス白沢の湧水を水道水として使っている。伝説から、両方を混ぜた水は夫婦円満や縁結びの水とされている。

大町の郷土料理を提供する食事処「わちがい」の中庭や、塩の道博物館、JR信濃大町駅前など市内各所に水飲み場が設けられており、飲み比べをする人、ペットボトルに汲む人、女清水と男清水を混ぜ合わせる人など水を楽しむ人の姿が見られる。

水資源を生かしたまちづくりを行う「大町水物語の会」は水路や水飲み場など大町の水と文化を織り込んだ散策マップを作成。マップを片手に水のまち・大町を探訪したい。

蒜山の恵み「塩釜冷泉」 岡山県真庭市

岡山県真庭市の塩釜冷泉は、岡山・鳥取県境に連なる中国山地・蒜山三座の中央、標高1122メートルの中蒜山の裾の谷間から湧き出す地下水。水温は一年を通して10度前後で、真夏でも長くは手をつけていられない冷たさだ。

湧水をたたえた約60平方メートルのひょうたん型の小池は、とにかく清らかで底が透き通って見えるほど。毎秒300リットルが湧出し、水が湧き上がる様子が確認できる。天上の国・高天原に湧くという「天の真名井」の神話と結びつける説もある。

塩釜冷泉は、環境庁の「名水百選」にも認定されているほか、地元住民の生活用水として親しまれている。現在、取水は禁止されているので、その点は注意が必要。

毎年6月20日は、冷泉を管理する塩釜奉賛会が祭事を開催。近隣には登山客に人気の中蒜山の登山口や塩釜キャンプ場、石彫公園、マスの養殖場があり、これらと組み合わせた観光もいいだろう。

薬師如来横の"霊水" 富山県上市町

富山県東部に位置する上市町・黒川地区に、「穴の谷(あなんたん)の霊水」と呼ばれる清水がある。環境庁の「名水百選」にも認定された名水だが、その特徴はなんといっても"霊水"であることだ。

この清水のありかは「穴の谷霊場」。参道から少し下ったところにある薬師観音堂に祀られた薬師如来像横から湧き出している。そのご利益からか、古来から病に効くといわれ、霊水を求めて全国から多くの参詣者が訪れる。

もとは北アルプス・剣岳など周囲の山々が育む湧水で、適度なミネラル、豊富なゲルマニウムを含む軟水。飲料水として適していて、ポリタンクを持って汲みにくる人も多い。汲水した後は、薬師如来におまいりを。醤油やこんにゃくなど加工品にも使われている。

霊場の周囲には自然林が広がる。中部北陸自然歩道の一部で、北アルプスや立山連峰の眺めとともに豊かな自然を楽しみたい。

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