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秘湯で味わう静寂の癒し 山梨・西山温泉

09/03/31

南アルプスに囲まれた深い渓谷沿いに立地する山梨県・西山温泉。大自然に包まれた環境と、1300年もの歴史が育んだ秘湯としての魅力を求めて、多くの湯治客が訪れる。周囲には季節とともに鮮やかに色を変える木々、谷間を静かに流れる渓流のほか、寺院や宿場町など歴史資源も豊富だ。もうしばらくすれば新緑の季節。春の訪れとともに、静かな癒しを与えてくれる甲州の秘湯へ旅立とう。

南アルプスが生んだ湯治場

南アルプスの奥深い山間に1つの秘湯がある。西山温泉。北岳を源流とする早川渓谷沿いを走る南アルプス公園線を行くと、その秘境の湯治場が見えてくる。近隣の奈良田温泉などとともに、南アルプス温泉郷の一角をなす風情ある湯の郷だ。

西山温泉は、慶雲年間、705年に藤原真人の子らによって開湯したとされ、約1300年前の歴史を持つ。その歴史をひもとけば、甲斐を治めた武田信玄、天下を治めた徳川家康も訪れたとされ、偉人から一般人まで数多くの人の身体を癒してきた。

西山温泉のある早川町は糸魚川静岡構造線上に位置することから、渓谷の断崖付近から湧き出る源泉は湯量が豊富。古くから胃腸病や婦人病に効果があるとされる。深い緑に囲まれ、早川渓谷が流れる静寂に満ちたその環境から長逗留する湯治客も多く、まさに現役の湯治場として親しまれている。新緑、紅葉の季節には温泉と自然、伝統の妙を楽しみに訪れたい。

西山温泉の「慶雲館」は、県内有数の歴史を持つ老舗温泉旅館。全館全室の風呂、給湯が源泉掛け流しで、西山温泉が持つ魅力を十二分に堪能できる。

同館は2005年、西山温泉開湯1300年記念として敷地内に新たな温泉を掘削した。毎分1630リットルという、自噴する温泉として全国でも有数の湧出量を誇る。アルカリ性で源泉温度は51・5度。加温なしで使用できることから、全館源泉掛け流しが実現できるのだという。

浴場は6種あり、多彩な楽しみ方ができる。野天風呂「白鳳の湯」「望渓の湯」からは、早川の渓谷の美しさを眺め、展望大浴場「桧香の湯」「石風の湯」からは自然の緑がパノラマで楽しめる。そのほか、貸切野天風呂「瀬音」「川音」も備えている。

温泉の力と自然の力、純和風の旅館が持つ雰囲気を味わうことで、身も心も癒したい。

大自然の造形美 歴史資源も点在

西山温泉のある山梨県南巨摩郡早川町で観光といえば、やはり南アルプスの大自然。南アルプスの主峰である北岳など3000メートルクラスの山々に囲まれた景観は壮観であり、登山シーズンには多くの登山客で賑わう。

白鳳渓谷は南アルプス公園線沿いにある山深い渓谷で、西山温泉から車で約60分。仙丈滝や神楽滝など流れ落ちる滝が見どころで、早川が削り取った急峻な谷が秘境の奥深さを物語る。シーズン中は、ハイキングやキャンプで楽しみたい。5―6月には新緑、10月中旬―11月上旬には紅葉と、シーズンの初めと終わりに旬を迎える。紅葉の季節にはブナやカエデが赤や黄色に色づき、豊かな渓谷美に、つい見とれてしまいそうだ。

また、近隣の身延山久遠寺は日蓮宗の総本山。鎌倉時代に日蓮が開いた寺で、高さ21メートルもの山門をくぐり、巨木が立ち並ぶ中を「菩提梯」と呼ばれる287段の石段を登れば、ようやく本堂にたどり着く。本堂東側には五重塔がそびえ立つ。2008年春、江戸時代初期の創建当時の姿に復元されたもので、高さは約38メートル。その大きさ、力強い建築彫刻が施された様子に息をのむ。

桜の名所としても名高く、3月下旬―4月上旬には境内の樹齢400年を超える2本のしだれ桜が満開の花を咲かせ、訪れる人の目を和ませる。

身延山は山梨百名山のひとつとして、身延山の西に位置する七面山は信仰の山として多くの登山家、信者が訪れる。古くから参詣客を迎えた宿場・赤沢宿は、2つの山を結ぶ参道にあり、往時の町並みを色濃く残す。この地域の歴史と伝統に触れるために訪れたいスポットだ。

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