観光業界専門紙「トラベルニュースat」おすすめ国内魅力再発見の旅

魅力変わらず 和歌山県那智勝浦・熊野を行く

11/12/22

今夏、台風12号による豪雨被害を受けた和歌山県那智勝浦・熊野地方。復興は着々と進んでいるが、観光客が戻ってくるには少し時間がかかっている。11月末、国土交通省近畿運輸局が実施した、風評対策のための観光ニーズ調査モニターツアーに同行して、復興状況の確認と地域の魅力を探った。

ツアーには旅行会社やメディア、観光を学ぶ大学生が参加。初日は、東海圏からの旅行者も意識して、まず三重県・伊勢神宮へ。神宮内宮を参拝し昼食に名物、伊勢うどんと手こね寿司を味わった。

伊勢から紀伊半島外周に沿う形で和歌山県那智勝浦町へ向かう。道中、新宮市・熊野川を越えるあたりで少し台風の爪あとが見られたが、特段変わった様子はない。個人的にはこのエリアは毎年プライベートで訪れているので、どうなっているのか不安だったが、少し安心した。

宿泊は勝浦温泉のホテル浦島。名物の洞窟風呂や眼前に広がる太平洋の眺めは以前となんら変わりはなく、宿泊客は被災前から比べると減少が続くが団体客も入っていた。ただ、現地の人に聞くと、なかなか客足は戻らないと嘆き、車中から眺める勝浦市街地もなんだか寂しそうに見えた。

2日目は、被害が大きかった那智・熊野を重点的に訪れた。熊野古道・大門坂に向かう途中、被災地・那智川には流れてきた岩石や流木などが転がり、爪あとは大きい。ただ、家屋の復旧作業は進んでおり、日常の生活は戻りつつある。

大門坂はシンボルである夫婦杉から約600メートルにわたって杉並木と石畳が続く。清々しい空気と木漏れ日を浴びながらのトレッキングで歴史の風情と自然に身を置く心地よさを体感。台風被害も感じさせない。

大門坂

大門坂の名物、夫婦杉をなでる

ガイドを務めた熊野・那智ガイドの会の大久保彰会長は、台風被害を身をもって体験。「夜は勝浦温泉の旅館ホテルの客室の灯りがまぶしいものだが、被災以後、今は半分以下が灯るのみ。ぜひ多くの人に来てもらって那智勝浦の灯を絶やさぬように」と声を大にする。

大門坂を登れば、那智勝浦観光の定番、熊野那智大社と青岸渡寺。朱塗りの那智大社、同寺の三重塔と那智の滝のロケーションはいつも通りの姿で、魅力は衰えず。那智の滝は滝壺まで降りると岩石が転がっているが、観光スポットとして問題はない。

青岸渡寺と那智の滝

青岸渡寺と那智の滝。
いつも通りの光景だ

熊野本宮大社を訪れた後は、田辺市本宮町の道の駅「奥熊野古道ほんぐう」で昼食に郷土料理であるめはりずしを賞味。熊野古道・中辺路から白浜町のとれとれ市場に立ち寄って大阪へ戻った。

めはりずし

これぞ郷土の味、
めはりずし

現状を見てまわって参加者から「旅行者の少なさに驚いた」という声が挙がった。道の駅「奥熊野―」の関係者が「売上は対前年で5割まで戻ってきたが、川湯温泉の入込は2割ぐらいだそう。風評被害の強さを感じている。地元の人は元気にやっているので、早く元の状態に戻ってほしい」と話すように地域全体で入込は元に戻らず、厳しい状態が続いている。

参加者は「思っていた以上に台風の爪あとが大きかったが、今回まわった観光スポットはどこも問題がない。一部アクセス面を除いて観光面では今まで通りになっていいはず」と声を揃える。県が予算を大きくかけて観光復興に取り組むが、観光業界としての支援も引き続き求められる。

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