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反転攻勢へ万端 奈良県南部―吉野町、天川村を行く

9月の台風12号で被害を受けた奈良県南部の風評対策モニターツアー(主催・近畿運輸局)が11月24―25日に行われた。比較的被害が軽微だったにも関わらず観光客の大幅減少が続く吉野町、天川村を視察した。風評を払しょくする情報発信や旅行商品の造成を期待したもので、旅行会社やマスコミのほか大学の新聞部、ブロガーなど20人が参加した。

吉野町では、旅館歌藤が経営するログハウスカフェ陽(ひなた)ぼっこで昼食を食べた。地元農家と契約栽培している新鮮な野菜をふんだんに用いた料理で、女将の歌藤順子さんが吉野地域全体を元気にしたいというこだわりのメニューだ。「9月の豪雨以降、吉野全体では例年の半分くらいのお客様でしょうか。でも、皆で力を合わせて吉野の良さを伝えていきたい」。町のいろいろな業種の人たちで地域を盛り上げようとしているのだという。

吉野町観光参事の山本茂之さんの案内で金峯山寺蔵王堂や吉水神社、竹林院群芳園の庭園を見て歩く。年間観光客数の3―4割が集中する桜のシーズンに門前町を歩いたときは人酔いしそうだったが、時期をずらすとこんなにゆっくり歩けるとは。土産物屋や酒屋を冷やかしながら、ぶらつく楽しさはちょっとした発見だった。

吉水神社

吉水神社から眺める桜の
景色は「一目千本」といわれる

山本さんに話を聞く。「11月中旬になって客足が回復してきた」という。来年は近鉄吉野線が開業100周年を迎え、3月末から金峯山寺の秘仏特別公開、4月には森林セラピー基地がグランドオープンする。反転攻勢へ準備万端だ。

天川村に移動。「陀羅尼助(だらにすけ)」の看板を掲げた薬屋や木造の旅館が建ち並ぶ洞川温泉に着いた。大峯山に登る行者の拠点として栄えた地区で、この一角だけタイムスリップしたような佇まい。この日泊まった紀の国屋甚八も創業300年という。

七代目宿主の紀埜弘道さんは「この20年で行者は3分の1に減ってしまいました。昔は、山が開いている5―9月だけ営業していたんですが今は通年営業です」。10年ほど前から一般客の売り上げと逆転したそうだ。豪雨以降はその一般客がなかなか戻ってこないのだが、紀埜さんは「まぁ仕方ないよね」と達観。洞川温泉の長い歴史を思わせる一言だった。

その夜、この秋一番の冷え込みだったが、ふとんにはアンカが入れられていてホカホカ。朝までグッスリ眠った。

翌朝は、天川を学ぶ会の大西房次会長が村内を案内してくれた。温泉街の龍泉寺は境内から水が湧き、本堂前におそろしく澄んだ水を湛えた池がある。行者が身体を清める場所だ。名水百選の「ごろごろ水」は平日の朝早くにも関わらず、けっこうな数の人が水を汲んでいた。きれいな水と滝と巨岩の景観が美しい「みたらい渓谷」も歩いた。そして、日本三大弁財天の天河大弁財天社を参拝。豪雨で一部建物に被害があったが、今は復旧している。ここは芸能の神様とばかり思っていた。でも、もとは水の神様でもあったと知った。

みたらい渓谷

きれいな水と滝と巨岩の景観が
美しい「みたらい渓谷」

結局、天川村では川、水にまつわる場所ばかりを訪れていた。大雨や暴れ川でたいへんだとばかり思っていたけれども、この村は昔から水と折り合いをつけて共にあったのだ。村が賑わう毎年4月末の「名水まつり」の時に再訪してみようか、と思う。

(11/12/09)

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