観光業界専門紙「トラベルニュースat」おすすめ国内魅力再発見の旅

クエを食え 南紀白浜・日高でまんぷく紀行

09/12/24

和歌山県・南紀の冬の味覚として勢いが増しているのが「クエ」。「幻の魚」と呼ばれたが、白浜では近年、養殖クエの登場で気軽に味わえるようになった。今や日本海の松葉ガニ、若狭のフグに対抗できる存在に成長したクエの魅力に迫る。

養殖の白浜・天然の日高 甲乙つけ難し

クエは大きいもので体長1㍍以上、重さは30㌔におよび、そのグロテスクな風貌に反して脂がのった淡白な白身は上品な味わい。地元では「クエを食ったら、ほかの魚は食え(クエ)ん」と言われるほどだが、水揚げ量が不安定で口に運ぶことが難しく、ファンは口寂しい思いをしてきた。

しかし2007年、この状態が一変する。近畿大学水産研究所が養殖クエの生産技術を確立したことで安定供給が可能に。白浜町は「紀州本クエ」として旅館ホテルなどで提供を始め、ブランド化に努めてきた。

養殖クエ

このイカツイ魚が上品な味を持つなんて・・・

紀州本クエは鍋のほか、フグのてっさに負けないと評される刺身、唐揚げ、天ぷら、あら煮、ひれ酒などフルコースで。肝も味が濃く食通を唸らせ、美肌効果があるコラーゲンを多量に含む皮は湯引きして食べる。今年からは夏場も味わってもらおうと焼きグエの提供も始めた。

同研究所白浜実験場の山本眞司技術係長は「適度に歯応えがあり、脂も乗っており、鍋料理に最適。天然ものに劣りません」と胸を張る。なるほど、確かに締まった身は歯応え十分。脂にもしつこさがなく、意外とさっぱりと味わえる。

白浜温泉旅館協同組合の小竹幸理事長は「クエ目当てに白浜に来たという声が聞かれ、冬の白浜に賑わいが出たのは明らか。完全に白浜名物に定着しました」。

一方、天然ものも負けてはいない。日高町では天然のクエを地元旅館や民宿が提供しており、「クエのまち」とアピールを展開。希少なクエが味わえるまちとしてリピーターを集めてきた。

新鮮なクエは豪快に鍋で。切り身をさっと炊き、口に放り込むと、弾力ある締まった身に濃厚な脂が絡み合った旨味が口の中に広がり、自然の恵みを感じさせる。量も多く、お腹はクエで満たされる。

クエ鍋

やっぱり鍋で豪快に

もともと釣り人たちにも人気のクエ。昔はクエは地元でもあまり食べることがなかったそうだが、観光旅館岬では釣り人たちの要望で32年前から提供を始めた。同館の冨田晃行さんは語る。

「天然の美味しさはやっぱり鍋で豪快に味わってほしい。釣り人も一般のお客も鍋を囲んで満足して帰られます。ここ数年でリピーターも増えています」

白浜のクエは07年から旅行商品化され、宿泊プラン利用実績は07年の約4千人から今年は1万人超の見込みとなるなど順調に推移。JR西日本の旅行商品「駅プラン」では両町のクエを味わうプランを販売し、地域と協力してクエの売り出しに一役買っている。

養殖、天然と、それぞれの魅力を有している。3月までの旬を目がけて、味比べといきたいところだ。

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